2022.05.24
管理職が担っている部下育成の5大要素 【その3・人を育てる技術⑨-任せる技術】
終息の兆しが見えない新型コロナウイルスや人手不足・物価高騰などの厳しい現状が続く中で、会社を成長させ続けるには、管理職の…
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Column
2022.06.15
前月の本欄では、任せられる段階まで来た部下に、何をどこまで任せるのか、仕事の割り振りをどうするかなどについて解説しました。
前回記事:管理職が担っている部下育成の5大要素 【その3・人を育てる技術⑨-任せる技術】
上司が部下に「任せる」というのは、そう簡単なことではありません。「これで少しは楽になるかな…」などと呑気なことを考えているとしたら大間違いです。場合によっては、「任せる」ゆえに上司の仕事が増えるかもしれません。
「彼はもう任せて大丈夫」という判断をしたならば、仕事の割り振りを考え、最初はおそらく安全運転で確実に進められる仕事を割り振る場合が多くなるでしょう。
それでも、最初は「大丈夫かな…」と、最初から最後まで心配します。仕事ぶりを遠目で何度も見ることもあると思います。見るだけではなく、心配になって何度も傍に来てアドバイスをすることもあるかもしれません。
心配するのはわかりますが、仕事ぶりをジッと見られる部下はたまらない気持ちになります。初めて任されてモチベーションがグーン上がってがんばり始めたのに、ずっと見られていると思うとモチベーションは急速に下がっていきます。
「なんだ、この仕事を任せるといったからやる気になったけど、結局は信用していないんだ」と、気持ちが萎えてしまいます。また、ずっと見られていると委縮してしまい、思い切って仕事ができなくなります。
こういう心理状態に追いやるとどうなるかといえば、何らかの失敗をしてしまうのです。これで叱られたりすると部下は堪りません。自信を無くしてしまったり、心配でずっと“観察”していた上司に反発心を抱いたりもします。「なんだ、結局は任せてもらえないんだ」と。
任せたばかりの時には、失敗はやはりあります。失敗するのが当たり前とさえ考えていたほうがよいでしょう。
会社に大きな損害を与えるような失敗は避けなければなりませんが、少々の失敗は最初から予測したほうがよいのです。任せられる段階に来た部下も、初めは緊張してしまうので失敗するような場面ではないのに失敗してしまうということは誰でもあります。上司自身もきっとあったと思います。
失敗は成功の母ですから、失敗を恐れていたら部下のその後の成長が期待できなくなります。「失敗の責任はすべて自分にある」と考えて思い切った任せ方をすることも必要なのです。
最悪のケースは、「なんだ、やっぱりミスしたか。任せるのはまだ早いか。最初から自分でやったほうがよかったな」と、一旦割り振った仕事を取り上げて自分でやってしまうパターンです。
このパターンを繰り返しているならば、部下は間違いなく退職届を出すことでしょう。残っている部下は、自律人財どころか上司の手足止まりで終わってしまうことでしょう。マーケット拡大時代に実績を上げてきた管理職の多くは、こうした「手足化」状況を作りがちです。
何度も繰り返しますが、マーケット縮小時代はこういうタイプの管理職は組織にとってマイナスに作用します。組織の力を考えない管理職では、人を育てることができないし、会社の力になることはもはやできません。
マーケット拡大時代に華々しく活躍をしてきた古参の管理職は、部下を本気で育てようとはしていません。「根性があれば売れるんだよ。ほら行ってこい!」と尻を叩くことしかやりません。
こういう雰囲気の職場で育ってきた中堅社員も、必然的に根性論をベースにしたリーダーシップしかとれません。また、かつて流行った「ノミニケーション」で自分のファンづくりをして、密かに役員を目指します。これらは、もはや通用しないマーケット拡大時代の部下育成です。
この時代と今日の時代は、真逆と言ってもいいほど大きく変わっています。あるいは変わりつつあります。職場の考え方や組織のあり方、社員同士のコミュニケーションのあり方などが根底から変わりつつあるのです。
たとえば、かつては終電に間に合う時間まで残業して帰る社員や始発電車で早々と出勤する社員を上司たちは誉めちぎっていました。
マーケット縮小時代の職場は、こうした仕事のやり方や社風、雰囲気を良しとしていません。なぜ良しとしないのかといえば、これらはマーケット拡大時代の在り様であり、すべてが属人的な力学によって動き、収益を上げてきたからです。
マーケット縮小時代には属人的な力の足し算では収益を上げることが出来ないのです。では、マーケット縮小時代において収益を上げる源は何かといえば、組織の力なのです。
組織の力には相乗効果があります。この相乗効果で組織力が無限に高まります。イメージ的にいえば、足し算でなく掛け算で組織力が高まるということです。
私たちが理論構築した「成長の3要素経営」は、まさに組織の相乗効果を上げることによって収益の向上を図る考え方なのです。
「成長の3要素経営」の「3要素」とは、①組織づくり、②ビジネスモデル、③マーケティングの三つの要素のことです。この3要素を三角形で表し、三角形の真ん中に「数値の裏付け」を持って来ています。「数値の裏付け」とは、まとめて表せば、収益の数値です。
私たちG.S.ブレインズグループが目指しているのは、この3要素を徹底して追及することによって高収益体質の組織を築こうということなのです。
管理職による部下育成の技術は、「成長の3要素」のうちの「①組織づくり」に入っています。「成長の3要素経営」の一つである「組織づくり」の中で最も重要な位置づけとなるのが、現在、この経営コラムで伝え続けている「部下育成」にほかなりません。6つのアプローチで部下を育成するというのは、組織づくりの根幹を成すことなのです。
将来への希望を持って会社選びをし、新入社員として入社する。その新入社員がやがてグループリーダーもしくは部門の長として次の世代の新入社員を育てる役割を果たす。この人財入社及び人財育成サイクルを回すことがマーケット縮小時代を勝ち抜く絶対のプロセスなのです。
このプロセスを回し続けていく会社だけがマーケット縮小時代を生き抜くことができる、と私たちは考えています。
そのことを前提として、最後に最も重要なことをお伝えします。
新卒の新人社員にせよ、中途採用の新入社員にせよ、社員を育てるには計画が必要です。ざっくりした計画ではなく、一人ひとりの教育プロセスを鮮明に描き、本人も納得し、夢を持つ計画を詳細に描くのです。
私たちは「育成ロードマップ」と呼んでいます。そしてこのロードマップは上司がこっそり持っているのではなく、A君ならA君、BさんならBさんと共有するのです。つまりは、「見える化」です。
ロードマップを共有することによって、会社は会社で将来の青写真を描けます。そして、社員のほうは人生設計を描くことができます。
会社は会社としての根拠ある将来像を描く。社員は社員で自身の先々の人生設計ができる。──これから本格化するマーケット縮小時代を勝ち抜くには、これしかないと私たちは考えています。
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