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2022.11.07

売掛債権が回収できないときの税務上の取扱い2(法人税基本通達 9-6-2)

売掛債権が回収できないときの税務上の取扱い2(法人税基本通達 9-6-2)
コロナ禍に加え、最近の円安、物価高が企業の事業継続に影を落とし、会社倒産などの事象がお客様のお取引先に生じています。

前回は法人税基本通達9-6-1のいわゆる法的な貸倒れについて解説いたしました。
今回は実務上最も多いと考えられる同9-6-2「回収不能の金銭債権の貸倒れ」についてご案内いたします。

回収不能の金銭債権の貸倒れ

9―6―2 法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる。この場合において、当該金銭債権について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとして損金経理をすることはできないものとする。

(注) 保証債務は、現実にこれを履行した後でなければ貸倒れの対象にすることはできないことに留意する。

一般的に「実質的な貸倒れ」と呼ばれている9―6―2

9-6-2は一般的に「実質的な貸倒れ」と呼ばれております。これは法律上債権は存在しているにもかかわらず、債務者の経済的実情に着目して、事実上回収不能であることを理由に貸倒処理を容認するものです。そのような事情から、前回解説しました法人税基本通達9-6-1と異なり、金銭債権の全額(担保物があればそれを処分した後)が回収不能であり、かつ、貸倒として損金経理した場合に限って認められる制度になっています。

適用される場面

この通達が適用される場面は、「債務者の資産状況、支払い能力等」が外形的にも生じている状態、すなわち破産・強制執行・整理・死亡・行方不明・回復不能の長期債務超過・天災・事故・経済事情の急変等の事実は典型的に回収不能状態にあるとわかりやすいかと思いますが、これらの事実が生じていなくても、その資産状況等に照らしてこれらに匹敵するような事情があれば同様に取り扱われるものと考えられています。

また、通達上の文言では、もっぱら債務者の事情を中心に摘要の判断がされるかのように記載されておりますが、平成16年12月24日最高裁第二小法廷の判決では、債務者側の事情のみならず、債権回収に必要な労力、債権額がと取立費用との比較衡量、債権回収の強行によって他の債権者との軋轢が生じる等の経営的な損失なども踏まえ、社会通念に従って総合的に判断されるできものであるとの考え方があります。

よって、法律的に貸し倒れたものと異なり、この通達の規定上、その判断に至った客観的証拠を充実させ、社内での検討過程も同時に充実させることで、税務調査での疑義に対しての対抗手段として有効となります。

貸倒を証する書面について

よくお客様から、「法律的に貸し倒れたものではないので、貸倒を証する書面がありません。どのような書類が必要でしょうか?」ということをご質問をされます。会社として種々の資料や事情から回収不能であるという判断をした意思表示をする必要がありますので、会社の規模や組織体制に応じて、取締役会や経営会議の議事録、社内稟議などで明記しておくことをお伝えしています。そこにはその判断のもととなった各種資料も添付されるでしょうから、状況や過程から判断に至るまでが端的に記録されて残るものと考えられます。

いつでも行うことができるわけではないので要注意

なお、冒頭にも記載しましたが、この通達は債権が法律的に存在しているにも関わらず、事実上回収不能という状態であるときに会社が損金経理を意思表示として適用するものでありますが、回収不能状態であれば、いつでも自由にこれを行うことができるわけではなく「回収できないことが明らかになった場合」に限られています。
よって、例えば上記の社内稟議などで回収不能として認識したにも関わらず処理を怠っていた場合には、法人税基本通達9-6-1のように過去の処理を修正することができないので、注意が必要です。裏を返せば、いつその回収不能の事実を知るに至ったかという時期がポイントになるということです。

法人税基本通達9-6-1との比較(破産について)

最後に前回の法人税基本通達9-6-1との比較で、破産について考えたいと思います。9-6-1は法律的に貸し倒れたというものですが、そこには破産のことが書かれておりません。これは、9-6-1に書かれている民事再生法・会社更生法・会社法(特別清算)の3つが、裁判所監督のもとで法的な整理手続きを行うものであり、破産はこれと同じような債権の切捨てという手続きがないためとなります。それを反映してか、法人税基本通達のタイトルにも9-6-1は「切捨ての貸倒」、9-6-2は単に「貸倒」としています。

では、破産という行為はこれら3つと同視できないものなのでしょうか。
破産とは、裁判所が破産手続きの終結決定をするか、廃止決定をするかで完結します。これが行われれば、会社は法律的に存在がなくなります。債務はこの法律的に存在がなくなった会社の負債ですので、破産が成立したということは、債権者からすると法律的に会社も債務もなくなってしまったということになるかと考えられます。

実際、国税不服審判所の裁決においても、破産手続きの終結決定あるいは廃止決定が貸倒の時点であることを述べています。この見解がいかせられるのであれば、過年度に破産していたことを知った場合には、9-6-1を利用して更正の請求をすることが可能と言えることになろうかと思いますが、税務当局は9-6-1には破産とは書いていないゆえにこれを認めず、9-6-2を適用して損失にせよという調査官が多いように思います。
調査官の「通達に書いていないから適用できない」、一方、国税不服審判所の「貸倒の時期は破産の終結の時」、もちろん不服審判所は課税当局ではありませんが、見解が異なっているのは明確ですので、通達にも破産についての取扱いをはっきりと書いてもらいたいものです。

もちろん、破産当申し立て当時、その状況から全額を回収することができないとなれば、9-6-2で損失計上することは可能ですので、タイミングと状況で利用する通達が変わることと考えます。

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木村行宏

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G.S.ブレインズ税理士法人 代表社員税理士

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