経営に役立つコラム

Column

2022.09.07

居住用賃貸不動産に係る販売賃貸併用目的保有の留意点

居住用賃貸不動産
昨今の税制改正等により、不動産業を取り巻く消費税の取り扱いは大きく変化をしております。
・消費税率の改定、軽減税率の創設
・居住用賃貸建物の取得等に係る消費税額の調整
・インボイス制度の開始
・消費税還付申告に対する国税当局の対応の厳格化

等々、個人消費者もさることながら、事業者の皆様におかれましては頭を抱えてしまうような問題が多くあるのではないでしょうか。

今回は、不動産業と消費税に着目して、その論点となるポイントの一つを解説します。

居住用賃貸建物の消費税

ご存知の方も多くいらっしゃるかと思いますが、消費税は原則、売上先より預かった消費税から、支払先に支払った消費税を控除した残額を申告納税額として国に納めます。その時の支払先に支払った目的となる対象資産(購入したもの)が居住用賃貸建物の場合、それが賃貸されているかどうか、その保有目的が何であるかで、それに係る消費税の取り扱いが異なります。

賃貸されており、賃貸目的で保有・・・預かった消費税から控除できない。
賃貸されていないが、賃貸目的で保有・・・預かった消費税から控除できない。
賃貸されておらず、販売目的で保有・・・預かった消費税から控除できる。

※令和2年4月の税制改正により、令和2年10月1日以後、1,000万円(税抜)以上の居住用賃貸建物に係る消費税は、その賃貸状況、保有目的を問わず、購入した年の預かった消費税から控除できないのでご注意ください。

居住用賃貸建物から生まれるであろう売上が、消費税の対象となる売上なのかそうでないのかで決まることとなります。

居住用の家賃であれば消費税はかかりませんが、居住用賃貸建物そのものの売却であれば、その売却代金には消費税がかかります。

賃貸されており、販売目的で保有

賃貸状況、保有目的の組み合わせの中で論点となるのが、賃貸されており、販売目的で保有する場合の取り扱いで、居住用の家賃収入もあり、居住用賃貸建物そのものの売却収入も想定されるという状況です。

その場合にまず考えられるのが、併用という考え方です。その時の居住用賃貸建物に係る消費税の取り扱いは、預かった消費税から控除できるが一部のみ控除可能、となります。

保有目的の実態とその考え方

では、その併用目的による一部控除が国税当局に認められるかどうか、という点には注意が必要です。
その保有目的が何であるのかを形式的に判断されてしまう可能性もございます。

販売目的であるのであれば、棚卸資産として計上し、減価償却をしていないか等がそれにあたります。
ただし、消費税法上その併用目的は認められており、税法上の考え方は実態課税であるため、形式的な状況のみで併用目的が否認されるべきではありません。
固定資産計上し、減価償却をしたら、消費税法上の併用目的が認められないのかというとその限りではないと考えます。
費用収益対応の原則より、たとえ販売目的の棚卸資産であったとしても、家賃収入がある以上、それに対応する減価償却費を計上することは会計上自然なことだと考えられるためです。

以上の通り、その保有目的が何であるか、その実態に応じた判断がされるべきではありますが、国税当局の形式的判断により認められない可能性もございます。

その保有目的の実態を示す裏付けをどこまで用意できるかが非常に重要となりますので、この様な取引のある事業者の皆様は今一度ご確認されてはいかがでしょうか。

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萱野修弘

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萱野修弘

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