過去の赤字法人率を推移で見ると、リーマンショック後の2010年度約75%の赤字法人割合からは約10%の改善を示しています。

また見方を変えますとざっと100万社、約35%の会社は黒字経営が出来ているということになります。

それでは黒字経営を継続されている会社の特徴とはどのようなものでしょうか？
そのひとつに、経営者が「利益」を大切な数値指標として捉えているという点があげられます。

経営者が関心を持つ経営数値と言えばまずは売上高ですね。
会議などにおいても「今月の売上高は・・・」と売上に目が行くのは当然のことです。
収益として獲得した売上高から、仕入原価や人件費、家賃や光熱費などの経費を差し引いて利益は計算されます。売上により各種費用をまかなうと考えれば大いに関心を向けるべき経営数値です。

では「成長」するのに大切な経営数値と言った場合、売上高のみで大丈夫でしょうか？
仕入れた商品を仕入れ以上に安く販売すれば、売上高は大きく膨れ上がります。しかしこれは「成長」ではなく「膨張」です。明らかな赤字経営であり、会社はいずれ倒産します。
経営者として「売上高」だけでなく「利益」という経営数値に目を向けることで、会社は大きく「成長」するのです。
その意味からも「成長」とは、「利益」の増加を伴った「売上」の増加の継続と言えるでしょう。

「利益」に関心を持ち、「売上」達成とともに「利益」を達成するという考え方を、ステップを踏んで持つようになれば、より財務基盤の強い会社・安定した会社となり、会社は大きく成長し、この考え方のステップを私たちは「成長の３ステップ」と呼んでいます。
「成長の３ステップ」　＝　①「利益」を決めて　②決めた「利益」を守り　③守った「利益」を活かす　ステップです。

黒字経営のベースは「利益」ですので、「利益」を意識した経営ステップとも言えるでしょう。
では、この成長の３ステップとは具体的にどのようなものなのかを、順に説明していきます。

皆さんは、毎事業年度の目標利益を決めていますか？
「利益を決める」とは、別の言い方をしますと毎事業年度の予算を立てるということです。
この予算は、売上目標としての売上予算だけでなく、利益予算を意味します。
利益予算ですので、売上のほか、仕入原価や販売費・一般管理費などの経費を含む会社全体の予算になります。

さて利益についてですが、損益計算書上には５つの利益があり、それぞれ意味合いが異なることをご存知でしょうか？

【５つの利益】
①売上総利益（粗利）
②営業利益
③経常利益
④税引前当期純利益
⑤税引後当期利益

それぞれの違いを押さえ、社長であれば③経常利益までの予算を決めて事業年度をスタートして下さい。
中小企業の多くは、金融機関からの借入金があるかと思います。借入金は利益の前借りですので、1000万円銀行から借りた場合には、今後の事業活動で得た利益から1000万円を返済しなければなりません。
借入金の決断を社長がする以上、返済原資となる利益の計画も社長がきちんと立てましょう。
とはいっても予算をどう立てて良いのか？予算の立て方のポイントについては、下記を参照下さい。

利益を決めたならば、毎月の予算実績管理を通じて「決めた利益を守る」必要があります。
この予算実績管理は、立てた予算と毎月の実績数値を比較・検討し、どの程度達成できたか、達成できない場合にはどこに原因（課題）があるのか、どうすれば達成可能かを仮説をもって検証するものです。

実績数値が正確に、かつスピーディーに算定されている必要があり、これを算定するためには「月次決算体制」の確立が必要です。
自社の「月次決算体制」が不十分という場合には、これを修正する必要がありますので下記のコラムを参考にしてください。

決めた利益をしっかりと守り、決算前３カ月となったならば、この「守った利益を活かす」ステージに入ります。
予算通りの利益が出ている、あるいは利益があるという状態ですので、これを有効活用して下さい。

一般的にここで「節税」という思考が優先されがちですが、そうではありません。
私たちは「守った利益を活かす」ステージを「成長投資」と呼んでいます。
来期以降の会社成長の源となる投資に効果的に使用することで会社は成長します。

例えば、売れる仕組みづくりとしてのマーケティングの積極展開やビジネスモデルの再構築コストなどが代表例です。近年では人材不足から採用・育成コストに積極的に投資する例も多くみられます。
それでも余剰があるという場合には、節税としての利益の繰り延べなどを検討していきましょう。この優先順位を間違えないことが「成長投資」のポイントです。

利益を決めて、守り、活かすという「成長の3ステップ」を3年継続して下さい。
またそれぞれのステップで、次第に幹部社員を巻き込んで行きましょう。
目標利益の達成確度は上がり、幹部・会社も大きく成長します。
ぜひ実践してみてください。