経営に役立つコラム

Column

2023.01.16

中小企業の「生産性」を考える~生産性が高いとは?「数値」から「課題」を発見し「価値」へと変える具体的方法

物価高騰が続くなか、多くの会社で「生産性」を上げる取り組みをされていることかと思いますが、改めてこの「生産性」とはどのようなものでしょうか?

「自社の生産性を高くするために、なにを取り組めば良いですか?」とシンプルに質問していくと、「売上を上げること」・「経費を削減すること」・「IT化や自動化、ロボット化を進めること」など様々な答えが返ってきます。

今回はこの「生産性」とはどのようなものかについて、数値面から考えてみたいと思います。

数値のもととなるインプットとアウトプットの関係

企業活動とは「ヒト・モノ(原材料・設備)・カネ」という「経営資源」を経営プロセスに投下し、これに「付加価値」をつけ、お客様に提供する活動と言えます。

このうち「付加価値」をつけるとは、お客様からみて価値のある商品やサービスを創り出すことを言います。価値ある商品・サービスを作り出す際にはスタッフの知恵が加わりますので(知恵の総和)、「知恵」こそ「経営資源」の本質とも言えるでしょう。

またこれをお客様に提供することで、お客様から代金を頂き、この代金を従業員の給料支払いや仕入れ先への支払いに充て、残った利益の蓄積から企業を永続させていくことが企業活動の原則です。

これを簡単に図示しますと下記【図1】のようになります。

では、これを数値化して算式で表すとどのようなモデルになるでしょうか?

【図2】から分かるようにアウトプットからインプットを差し引いた残りが付加価値であり、付加価値がプラスとなる限り、これを再投資することで会社は成長できます。

また、なるべく少ないインプットでより大きなアウトプットを得られるように、企業は工夫する必要があります。例えば時間管理や標準化などがその例でしょう。ここで「生産性」という考え方が出てきます。

得られた成果(アウトプット)に対し、投入した資源(インプット)はどの程度であるかの割合を「生産性」と呼び【図3】のように示されます。

計算式の分子には売上高や粗利額・付加価値額が、分母には時間や資金・労働者数などの数値が入りますが、いずれの場合でも「生産性」は成果」÷「投入資源の割り算で計算されます。

分子に売上高、分母に時間を採れば「時間当たり売上高」が算定されますし、分子に付加価値額、分母に総労働時間を採りますと「労働生産性」が算定されるといった具合です。

生産性を高めるために必要な3つの要素

では「生産性」指標のもととなるインプットとアウトプットの関係を理解したうえで、この「生産性」を高めるために何をすればよいかという答えを導くためには、さらにどのような検討要素が必要でしょうか?

少なくとも下記の3つが必要なことに気付かれるはずです。

必要な3つの検討要素

① 自社の現状数値の把握
② 基準(目標)となる数値の設定
③ ①と②の差異を捉え、原因の掘り下げ

労働生産性を例にしますと、労働生産性=㋐付加価値額/㋑総労働時間で算定されますので、㋐の自社の付加価値額をとらえたうえで、㋑の自社の総労働時間を把握する必要があります。

ここで中小企業においての課題は、自社の情報が整理されておらず、これをすぐに算定できないといったケースが多いことです。

また自社の数値と比較すべき同業他社の数値や、自社の目標となる基準数値が設けられていないといったケースも散見されます。

「生産性」を高めるために状態を数値で把握し、基準を設け、差異を捉える、というステップを実践下さい。そのうえで原因の掘り下げをしていくことで感覚的な経営(どんぶり経営)からの脱却が可能です。

「数値」から「課題」を発見し「価値」へと変える7つのステップ

3つの検討要素で差異を捉え、数値上の「課題」が明確になったあとに「課題」を「価値」へと変えることで会社は成長します。

これを私は「数値」から「課題」を発見し「価値」へと変える7つのステップと呼んでおりますが、実は多くの中小企業でこのステップが実行されていません。

①数値上の課題の正しい認識
②課題の徹底的な掘り下げ
③本質という岩盤が見える
④本質に対する改善仮説か創造を持つ
⑤改善に向け3W(What・When・Who)の明確化
⑥PDCA+2Sで実践
⑦達成と改善を確認

具体例で解説

具体例でステップを解説しますと下記の通りとなります。
具体的事例:飲食業のケース

ステップ①:数値上の課題の正しい認識

飲食業のA社では、アルバイトスタッフの不足から営業に支障が生じ営業時間を短縮しています。

そこで、現在の時間帯別スタッフ総労働時間と時間帯別入店客数、及び目標売上に対する適正な人員配置を数値上再検討したところ、平日のランチ時間帯及び週末のディナー時間帯にはスタッフ不足が生じている反面、平日のディナー時間帯と営業前の仕込み時間帯にはスタッフ超過が生じていることが分かりました。

ステップ②:課題の徹底的な掘り下げ

短期的解消には、現状スタッフのシフト移動要請と本部からの応援で対応しますが、近隣同業店舗に比べ時給単価が〇〇円低く、またスタッフ募集の効果も〇%と芳しくない点や、毎月のシフト決めや出勤時間への融通性が低いといった運用上の課題も散見され、定期的な妥当性や見直しを検討してこなかったことが要因であることにたどり着きました。

ステップ③:本質という岩盤が見える

更に掘り下げ、本質的課題は下記の3つと結論づけます。

◆毎月の数値上からの具体的検証不足
◆昨今の最低賃金の上昇も踏まえた賃金体制の整備(時給アップ)の遅れ
◆勤務体系の見直しによるシフト運用の弾力化の必要性

ステップ④:本質に対する改善仮説か創造を持つ

ステップ③に対し、改善仮説として下記のように考えます。

①毎月の効果測定と検証を定期会議で実施
②近隣及び同業他社の状況の深堀調査と専門家へ相談のうえ改訂スケジュールの策定及び資金シミュレーションの実施
③週〇日、〇時間からでも出勤可能となるよう見直しと変更にあわせた現場オペレーションの見直し

ステップ⑤:改善に向け3Wの明確化

上記に対し、3WとなるWhat(何を)、When(いつから、いつまでに)を明確に定め、ガントチャートで「見える化」します。
5W1Hまで明確に出来れば理想ですが、多くの中小企業では誰がやる?=すべての取り組みが社長であったり、いつから取り組むかを決めずに後回しとなるケースが多くあります。3Wをしっかりと決めることがスタートへの第一歩です。

ステップ⑥:PDCA+2Sで実践

PDCAの意味として、
P・・・Plan(計画)、D・・・Do(実行)、C・・・Check(検証)、A・・・Action(軌道修正・再行動)であることはご存知かと思います。

ここに2つのSを加えていただき、中小企業においてはPDCAサイクルが円滑に回るよう工夫が必要です。
1つ目のSはstructureを意味し、軌道修正・再行動に際して上手く回らない構造の再構築が必要という意味、また2つ目のSはShareの意味で、メンバーで共有の上行動を進めることが結果を出すためには必要であるという意味となります。

ステップ⑦:達成と改善を確認

達成と改善を確認という最終ステップのモレが多いことも中小企業の現実かと思います。
「やったつもり・・」・「指示したはず・・」ではなく、「業績達成PDCA会議」の開催を通じて
①KPI効果測定と効果検証
②見える化と共通認識化
③知恵の総和
をもって生産性が高まったこと、またその改善が進んでいることを必ず確認してください。

7ステップの実戦でぜひ「数値」から「課題」を発見し「価値」へと変える=「勝ち」を描く「ちから」を強化してください。

ご不明な点はG.S.ブレインズ税理士法人 財務コンサルティング事業部にお気軽にお問合せ下さい。

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