経営に役立つコラム

Column

2022.07.20

[部下育成]人としての成長をどう持続させるか

これまでの経営コラムの中でお伝えしてきた、自ら考え行動する社員を育てるロードマップ「部下育成6つのアプローチ」のまとめと、テレワークの普及によって起きている社内コミュニケーションの課題についてお伝えいたします。

会社を支えるのは、自ら考え行動する社員

前回まで、部下育成の6つのアプローチ」(①知る、②聴く、③観る、④認める・褒める、⑤伝える・考えさせる、⑥任せる→自律人財へ)について解説してきました。「自律人財」とは、上司に指示されて初めて動くのではなく、自ら考え自ら行動する社員のことを指します。

部下育成6つのアプローチ

「6つのアプローチ」とは、部下を持つ管理者が新入社員をはじめとする若手の部下を「自律人財」に成長させる共通ロードマップです。このロードマップは業種業態を問わず、入社してきた若手社員を育て、会社の将来を築いていく人財に育てるためにG.S.ブレインズグループが構築したものです。

この「共通ロードマップ」を参考にしながら、自社独自のロードマップを構築していってほしいと思います。

コロナ禍が終息しないなかでは困難な面もありますが、私たちが再三指摘しているように、日本の労働人口はすでに減少カーブを描いており、必然的にマーケットが縮小してきているのです。同時に若手社員がなかなか定着せずに、離職率が高くなっている状況もあります。

このような厳しい経営環境の中を勝ち抜いていかなければならない中小企業は、もはや“待ったなし„です。「コロナもそろそろ終息するだろうし、うちの若手社員は定着しているから大丈夫」などと呑気なことを言っていると、会社は最悪の方向に向かっていってしまいます。

幸い私たちがお手伝いしている中小企業の多くは、マーケット縮小時代を想定しながら盤石の企業体制を構築しつつありますが、まだまだ経営者の本気が見えないケースもなくもありません。

いえ、経営者ばかりではありません。現場で若手の社員を抱え、「○○さんは、辞めないだろうな……」と離職の心配をしている管理者も少なからずいるのです。

私たちが「部下育成の6つのアプローチ」を編んだのも、本欄で詳しく解説してきたのも、以上のような状況があるからにほかなりません。

テレワークはこれからも必要だが……

ところで、皆さんの職場では「テレワーク」や「オンライン・コミュニケーション」はどの程度取り入れ、どの程度定着しましたか? 業種等によってはほとんど無理というところもあると思いますが、日本の産業界全体を見ると、かなり導入が広がり、活用している現状があります。大手ばかりではありません。中小企業でも、普及しつつあります。

もちろんテレワークは、メリットは大きいものの、少なからずデメリットもあります。最もデメリットが大きいのは、上司と部下とのコミュニケーションでしょう。

コミュニケーション機会の減少は若手社員にとって重要な問題

テレワーク前のコミュニケーション機会と中身を振り返ってみると、実に大きなギャップがあることに気づくと思います。毎朝「おはよう」と挨拶し合い、みんなが机を並べていた職場の場合とテレワークの場合を比べてみると、必然的にコミュニケーション量が少なくなります。この違いは半端ではありません。

たとえば職場では毎日、こんな会話をしているはずです。
部下「課長、教えて頂きたいことがあるのですが、今、よろしいでしょうか」
上司「ああ、いいよ。何についてなのかな?」
部下「ここなのですが、これはどう解釈すればよいのでしょうか。すみません、教えて頂いているかもしれませんが、もう一度教えてください」
上司 「そうか、わかった。そっちに行って説明しよう」

また、こんな会話も少なくなかったと思います。

部下「係長、先日営業で訪問したG社からの電話が来ていまして、導入したときのソフト面のコストはどの程度かかるのか、と聞いてきたのですが……」
上司「そうか。確か、規模的にはB社に近いので、見てみよう。調べてこちらから電話すると言っておいて」

こういう会話、職場では当たり前のように行われていると思いますが、テレワークではできません。職場であれば、経験豊富な上司に聴けるし、上司が席を外していれば先輩社員に聴くとか、「すぐに折り返します」と言ってから上司を探すとか、速やかな対応ができます。

テレワークはこういうコミュニケーションができないというネックがあります。いざという時に助けてくれる人がそばにいるかいないかは、若手社員にとっては重大な問題です。

「そういう場合も、リモートでやれば済むことじゃないか」と、軽く流してしまう上司やベテランも多いと思いますが、こういう場合(顧客に待たれているなど、早い対応が必要な場合)に助けてくれる人がいなかったという印象は、本人の記憶に強く残ります。

テレワークのこうしたコミュニケーション不足の問題は、実際に少なからず多いのです。たとえば、某社では若手社員のミスが続き、その社員は追い込まれてうつ病になってしまいました。

また、上司のほうが追い込まれてうつ病になったという例もあります。対応策として一つの結論をいえば、テレワークやリモートコミュニケーションは新人や若手など経験の浅い社員にはむずかしいということでしょう。「仕事がつまらない」「冷たい職場」「同僚の名前はどんどん忘れるし、上司の印象も薄れてくる」等々、不満が募っていきます。

要は、チームで行う仕事、チーム力がものを言う業種業態では、テレワークは向かないということになります。もちろん、そういう業種であっても、部門単位で考えると可能になる場合もあります。

テレワークによって企業のコストが大きく減り、生産性が向上するケースは少なくないので、実際のところは会社次第ということになります。

具体的には私たちG.S.ブレインズグループにご相談ください。

勝敗の行方は上司と部下の接点にかかっている

テレワークの問題が長くなりましたが、理由があります。これからマーケットの縮小がどんどん進んでくると、勝つも負けるも各企業の総合力次第ということになります。そして、「総合力」の中で最も差が出るのが社員一人ひとりの優劣であり、その一人ひとりが集まった組織の力ということになります。

その組織力の優劣を決するのが、前回までの本欄で解説してきた「部下育成の6つのアプローチ」(共通のロードマップ)にほかなりません。

新人や若手社員が自律人財となり、マーケット縮小時代を勝ち抜き、会社の将来を築いていけるかどうかは、この6つのアプローチが成功するか否かにかかっていると私たちは断言しています。

そして、6つのアプローチがそれぞれうまくいくか否かは、ひとえに上司と部下の接点の在り様にかかっているのです。

果たして御社の管理職はそのことを意識し、本気になって部下を育てようとする言動をしているかどうか、自らを振り返っていただきたいと切に思います。その具体的なシーンである部下との面談(主として対面)について、次回に詳しく解説する予定です。

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近藤浩三

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近藤浩三

G.S.ブレインズグループ代表 税理士

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