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2023.06.06

その決算賞与、大丈夫ですか?

その決算賞与、大丈夫ですか?
3月決算の法人は5月末の申告期限を迎え決算も終了し、ようやく落ち着いた頃かと思います。
その決算でよく出てくる論点で従業員に対する決算賞与がございます。
今回はその従業員に対する決算賞与について見落としがちな論点をご紹介します。

決算賞与の何が問題?

決算賞与を支給する場合、おおよその決算数値を把握したうえでその支給額を決定したいという話をよく聞きます。
つまり決算対策として決算賞与を考えられるケースが非常によくあります。
その何が問題となるかというと、事後的に金額を決定して、決算の利益調整が可能となってしまうため、問題視されるのです。

その期の損金として認められる費用は?

ではその期の損金として認められる金額はどのような費用なのでしょうか。
そこに求められる要件として、以下の全てに該当するものである必要がございます。

損金算入のための要件
① その事業年度終了の日までにその費用に係る債務が成立していること。
② その事業年度終了の日までにその債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
③ その事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。

簡単に言うのであれば、年度内に支払う義務が確定し、その支払いに対する役務を年度内に受けており、その支払う金額の見積もりが客観的にできうる状況であれば、支払自体が年度内に終わっていなくとも、損金とすることができることとなります。

その期の賞与として認められるには?

上記の前提を踏まえ、賞与については下記条件を全て満たすことで、その支給額の通知をした日の属する事業年度の損金とすることが可能とされています。

賞与を支給額通知日の属する期の損金とするための要件
① その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知をしていること。
② ①の通知をした金額を通知したすべての使用人に対しその通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1ヶ月以内に支払っていること。
③ その支給額につき①の通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること。

図で示すと以下の通りです。

正しい手順を踏むことで支給時期の前期、つまり支給額の通知をした日の属する事業年度にその金額を損金に算入することが可能となります。

落とし穴?

上記前提を満たすことで問題なく損金算入が可能なのですが、①の支給要件については実は意外な落とし穴があります。

その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知をしていること。

とある中の、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知という部分に注意が必要です。

ここで自社の給与規定を確認してみてください。
支給日現在退職済の社員には賞与の支給がない旨の記載がないでしょうか?
恐らくその記載のある給与規定が一般的かと思います。

その記載が①の要件を考えるうえで何を意味するかというと、同時期に支給を受けるすべての使用人とは、期末時点で賞与の支給が確定している社員全員を意味します。
そのすべてに対して通知することが求められるため、仮に支給日現在退職済の社員には賞与の支給がない旨の記載があった場合、期末時点で支給対象者が確定していないこととなり、通知要件が不十分となってしまいます。

つまり前期の損金としていた決算賞与全額が損金不算入となってしまいます。

予期せぬ損金不算入を防ぐために

給与規定を退職社員にも支給するよう変更するのも方法の一つですが、それは会社の意図するところと異なってしまう部分もあろうかと思います。
法律等で定められた諸条件を満たしたうえで決算賞与を算定対象年度の損金としたい場合は、同年度内に支給することが最も確実な方法であると考えられます。

それを実現するためには、正確かつ迅速な月次決算を行うことが必要です。
11か月分の正確な月次決算が行われていれば、同年度内に決算賞与を幾ら支給すべきかの検討も十分可能となります。

また、正確かつ迅速な月次決算により、有効な決算対策の検討及び実施はもちろんのこと、毎月の業績を経営判断に活かすことができるということにもつながっていきます。

今一度自社の給与規定、決算賞与を見直すと同時に、月次決算を始められていない方はこれを期に月次決算を始められてはいかがでしょうか。

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