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2026.06.12

個人から法人への無利息貸付は認められないのか?

個人から法人への無利息貸付は認められないのか?
法人税法上、役員借入金を無利息にすることは一般的によく見られる光景です。しかし、安易な判断に警鐘を鳴らす最新の国税不服審判所の裁決や、過去の最高裁判決が存在します。「一般的な常識」が通用せず、個人に思わぬ税負担(雑所得としての課税)が発生してしまうのは、一体どのようなケースなのでしょうか。
本コラムでは、無利息貸付が認められないとされるロジックや、国税当局が注目するポイントを解説します。多額の貸付を行っている経営者が、今すぐ知っておくべき防衛策について考えていきましょう。

はじめに

同族会社の場合、その会社のオーナー(株主)であり、代表取締役社長を務める者が会社に対して金銭の貸付けを行うものの、会社からは利息(会社にとっては支払利息)を徴収しないというケースは多々あるのではないでしょうか。

会社が支払利息を計上すると会社の損金となり、会社の所得を圧縮する効果があるものの、社長個人の所得になるため、これを回避するため、あえて無利息での貸付け、会社にすると無利息借入金とするわけです。

役員借入金を無利息としたとしても、法人税法上、一般的には問題はないとされています。

なぜ役員借入金が無利息であっても問題とならないのか

法人税法上の考え方では、役員借入金に対して支払利息を計上していない場合、「①会社は社長に対して利息を支払う」そして「②(利息を支払わなかったことによって)支払った利息が戻ってくる」と考えます。

①が支払利息として損金の計上もれがあり、②で(利息を支払わないことによる)受贈益の計上もれ(益金計上もれ)があると見るわけです。

ようするに、損金の計上もれと益金計上もれが同額であることから、差引の課税所得は発生しないと考えることになります。

片や、社長個人の課税関係を考えると、一見、上記の「①支払利息として損金の計上もれ」の部分が個人所得に反映して、課税が発生するように見えますが、所得税は、法人税の考え方と異なり、(法人と異なり)個人は営利目的で行動するとは考えないで、個人の事情関係で取引金額が決定されると考えます。

そのため、会社が利息を実際に支払った場合以外は、個人に対しての取引はないと考えます。法人税のように二段階の取引を擬制するとは考えない訳です。

国税不服審判所の判断

過去には個人から同族会社に対してなされた無利息貸付(会社にとっては無利息借入)に所得税法157条(同族会社の行為又は計算の否認等)の規定の適用を行い、個人に対して利息相当額の雑所得があるものとして認定し、課税を行った事件(最高裁平成16年7月20日判決・平和事件)はありましたが、国税不服審判所が公開する公表裁決のなかに、新たに無利息貸付に対する裁決がありましたので、ご紹介したいと思います。

その裁決は「令07-03-07公表裁決・差決番号:J138-2-03」であり、審判所は課税当局の課税処分に対し、「同族会社に対する金員の無利息貸付けは、融資条件や無利息としたことの理由等の諸事情を総合的に考慮すると経済合理性を欠くものであって、請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果となるものであると認められる」と判断しています。

課税当局も同族会社の行為又は計算の否認等の規定である所得税法157条を使わないと個人に対して雑所得(会社からの受取利息)の申告もれとして認定できないことから、この規定を使っています。これは、平和事件でも同様のロジックで課税を行っています。

平和事件において最高裁は、所得税法157条の趣旨を「本規定は、同族会社が少数の株主ないし社員によって支配されていることから、当該会社の株主等の税負担を不当に減少させるような行為又は計算が行われ、課税上の弊害が生じやすいことにかんがみ、税負担の公平を維持するため、そのような行為や計算が行われた場合に、それを正常な行為や計算に引き直して当該株主等に係る所得税の更正又は決定を行う権限を税務署長に認めたものである。」と認定しています。

まとめ

同族会社において役員等が無利息で貸付けを行う行為は一般的であるものの、前述の最高裁判決、国税不服審判所の裁決の内容を見ると、いずれもその貸付金額が多額であり、利息相当額も多額なものになる可能性が高い事案であることから、会社に対して多額の貸付けを行っている者は、注意をすべきと考えます。

税務署等、国税当局は判例や裁決が積みあがってくると、実際の調査の現場で過去の判例等のロジックを使ってくる傾向がありますので、もし、無利息貸付を行っているようでしたら、出来るだけ早く解消するよう努めるべきと思います。

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