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2020.04.07

民法改正の留意点 ~特別の寄与~

民法改正の留意点 ~特別の寄与~
平成30年度民法改正で新たに設けられた「特別寄与料」の請求に関する規定が令和元年7月より施行されました。

これまでも寄与分(民法904条の2)という制度は存在しましたが、これを請求できるのは相続人に限られました。つまり、相続人である長男の配偶者などは請求権者に含まれませんし、被相続人の老後の面倒を見たのが兄弟姉妹の場合であっても、被相続人に子がいる場合、兄弟姉妹は寄与分を請求することができません。そこで本改正により相続人ではない人達であっても、一定の要件を満たすことで特別の寄与に応じた金銭の請求が認められることになりました。

特別の寄与とは

被相続人の療養看護等により被相続人の財産の維持又は増加に貢献(特別の寄与)した相続人以外の親族に対して、遺産分割においてその貢献を寄与分として相続分に上乗せできる制度です。

相続人は寄与分(民法904条の2)で救済し、相続人が存在するが自らは相続人の地位にない親族を特別の寄与(民法1050条)で救済し、相続人が存在しない場合は特別縁故者に対する相続財産の分与(民法958条の3)で救済するという3つの制度として完成しました。各々の制度の当事者は異なりますが、共通して「被相続人の療養看護」が含まれることは、これからの高齢化社会では意味を持つものと期待されます。

特別の寄与の要件

上記の通り、以下の要件を全て満たす場合、特別寄与料を請求することが可能です。

(1) 相続人以外の親族である
※ 親族 … 6親等内血族及び3親等内姻族

(2) 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたこと

(3) 相続の開始を知った時から6ヶ月を経過したとき、あるいは相続開始から1年を経過したときまでに請求すること

特別の寄与分を請求するには

特別の寄与分は相続人に対して請求することになります。まず特別の寄与者は相続人と協議し、それが調わない場合は家庭裁判所に協議に代わる処分を請求することになります。

そして家庭裁判所は、寄与の時期、寄与の方法と程度、相続財産の額などを考慮して特別寄与料の額を定めることになっています。では、どの程度の支払いが認められるのでしょうか。

既存の寄与分の条文(民法904条の2)と特別の寄与分の条文(民法1050条)はほとんど同じ内容なのですが、寄与分の算出額は大きく異なるように思います。既存の寄与分は相続分の分け前であり、家業を手伝った子供たちの取り分の救済の面もあります。ただし特別の寄与については家庭裁判所が示した実務指針から考えると、その制度の趣旨からして、介護費用の精算的な金額を請求するに限られます。

特別の寄与に対する課税関係

特別の寄与者が支払いを受けた金銭は被相続人から遺贈により取得したものとみなされます( 相続税法4条)。特別寄与分の請求を受けるのは相続人ですが、支払義務は被相続人から承継した債務と位置付けることになります。特別寄与者は、寄与料の支払いが確定した後に2割加算の相続税を申告する義務を負い、寄与分を負担した相続人は相続税について更正の請求を行うことになります。

特別の寄与分として居宅が交付された場合は,金銭請求権である特別の寄与に対する代物弁済として譲渡所得課税の対象になるので注意が必要です。

最後に

生前自身の療養看護に努めてくれた親族に報いたいという想いがある場合、特に準備等がなければ、相続発生後に相続権のない親族が相続人に対して特別の寄与分を請求しなければなりません。しかも被相続人死亡後6ヶ月以内の請求が必要であり、そのような請求をすることで請求相手である相続人から、生前行ってきた療養看護が金目当てであったと思われる、さらには言われてしまう可能性もあります。

もし特別寄与者の療養看護に対して財産を遺したいという想いがあるならば、意思能力があるうちに遺言書や死因贈与契約、あるいは生前贈与等で準備をしておくことが、そのご親族からの特別の寄与に応えるより良い形であると思います

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萱野修弘

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G.S.ブレインズ税理士法人 執行役員
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