経営に役立つコラム

Column

2023.03.17

令和5年税制改正による贈与制度改正の影響と考え方

令和2年~令和4年とそれぞれの税制大綱において、相続税と贈与税を一体的にとらえて課税するという観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度の在り方を見直すとして、暦年贈与制度がなくなってしまうのではないかという予想がされておりましたが、昨年末に発表された令和5年の与党税制改正大綱において、ついに見直しが発表されました。
今回は、この改正を踏まえて、今後の対策をどのようにすべきか考えていきたいと思います。

令和5年の与党税制改正大綱での詳しい改正の内容は以前の記事をご覧ください。

暦年贈与が廃止に!?令和5年度税制改正でついに・・・
昨年、2022年12月16日に税制改正大綱が発表され、ついに贈与に関する相続税ならびに贈与税の改正が盛り込まれることとなりました。
今回はその税制改正大綱の中でも、注目されていた贈与の改正の一部についてご紹介をさせて頂きます。
結論としては、これまで相続開始前3年間の贈与財産の持ち戻し(※1)がされておりましたが、それが7年間に拡大されることとなりました…

(1)暦年贈与はもう使えないのか!?

今回の税制改正により大きく変わった点は、相続税が発生した場合の3年以内贈与加算という制度が、3年から7年に延びてしまい、生前に贈与したものが相続時に加算されて再計算される年数が増えたという点です。この3年以内加算は、年間110万円の枠内の贈与であっても相続財産に加算されるため、暦年贈与は終わったかのように考えている方も多くいらっしゃいます。しかし、まだまだ暦年贈与は効果があると考えております。

①3年が7年になったが、全期間が対象になるわけではない

これは以前の記事などで記載をしたことなのですが、相続税対策の王道は、「時間をかけてコツコツと」になります。今回の改正で加算される期間が7年になったため、確かにデメリットではありますが、早いうちからコツコツ贈与を続けていれば、7年の範囲に入らない贈与も当然に多くなります。したがって、早い時期からの暦年贈与は相変わらず、有効であると言えます。

②3年以内贈与加算の今回の改正に織り込まれなかった贈与

この3年以内贈与加算が適用されるのは、「相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人」が、被相続人からその相続開始前3年以内(死亡の日からさかのぼって3年前の日から死亡の日までの間)に暦年課税に係る贈与によって取得した財産があるときになります。ポイントは、この対象者「相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人」です。

この点を活かして、暦年贈与の効果をさらに大きくする手段が、子世代ではなく孫世代に贈与をすることです。これにより相続が課せられる機会が1回確実に減ります(1つ飛ばしです)。
この孫は基本的には、「相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人」に該当しないことの方が多いので、引き続き孫や子の配偶者などへの贈与は有効に機能します。逆に言えば、注意したいのは、孫を養子にして相続する財産がある場合、遺言で孫に遺贈する場合などは、「相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人」になり、対象になってしまうので、注意が必要ということになります。

(2)相続時精算課税に変えることがよいのか!?

今回の改正で、相続時精算課税にも年間110万円の基礎控除が設けられます。これにより暦年贈与と同じ無税枠を確保することができます。では、今後は相続時精算課税がベストな選択なのでしょうか?

①相続時精算課税の「相続時精算」は残る

年間110万円の無税枠ができましたので、相続時に精算されない贈与枠は獲得することができました。この点は、110万円以下での贈与しかしないのであれば、相続時に加算されてしまう可能性のある暦年贈与よりも優れていると言えます。

一方、相続時精算課税では、もともと1生涯2,500万円の枠はありますが、2,500万円の枠はこの枠内なら贈与税がかからないというだけで、相続の際に相続財産に加算されるという点では変わりません。つまり、無税で贈与できるということを利用したい、または今後の値上がり期待が大きい、あるいは贈与財産から得られる収入が大きい、ので今のうちに移しておきたい、という点では効果が大きいのですが、相続時に加算がされてしまうため相続対策になっていないことがあります。特に110万円を超えて贈与をしたいというときには、相続税対策になっていないことがあるということになります。

また、この制度を選択する際に考えなければならない大きな点は、一度相続時精算課税を選択すると暦年贈与に戻すことができないという点です。果たして相続税対策をしたいと考えた時に、将来相続時に加算されてしまう相続時精算課税を簡単に選択することができるでしょうか。

②見た目では年間110万円の無税枠はできたが・・・

確かに、相続時精算課税にも相続時に加算されない無税枠の年間110万円ができましたので、以前より相続時精算課税を選択しやすくなります。しかし、そこだけに注目してしまうと、相続時精算課税制度の方が優れているかのように勘違いしてしまいます。

今回の改正でこの枠ができたことが、非常にメリットのように書かれている記事を多く見るのですが、繰り返しになりますが、無税になったのは110万円の部分だけでそれ以外の贈与をした場合には相続時に加算されること、もう暦年課税には戻れないこと、を十分に吟味しなければならないと考えます。というのも、相続対策のご相談をいただくお客様では、相続財産を減らすために年間110万円の枠内の贈与では、効果が低い方が少なくありません。一方、年間110万円でも効果が高い人は比較的若い方や贈与するお孫さんが多数いるなどの場合です。

お気づきの方も多いと思いますが、これら効果の高い人は暦年課税の方が十分な効果が期待できるのです。

(3)では、今後の贈与はどう考えるべきか

今回の改正のポイントを整理しますと、

①暦年課税の3年以内加算が7年以内加算に延長される
②しかしその対象となる人は「相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人」から改正がない
③相続時精算課税は年間110万円については相続時に加算されない

ということとなります。

したがって、先日の記事でも記載をしましたが、相続発生が近いのではないかと懸念される方は相続時精算課税を選択して、110万円の枠を利用するのは有効です。しかし、これだけでは対策としての効果は一般的には低いと想像されます。したがって、孫や子の配偶者への暦年課税贈与と組み合わせることも一考かと思います(無論、贈与してよい関係性かなどの考慮は必要です)。

また、今回の改正が適用されるのは、令和6年1月1日以降の贈与からで、令和5年は従来通り3年以内加算の制度になります。つまり、令和5年に贈与をしたものは7年という制度の中に入らないのです。そのため、令和5年に贈与を初めて行う方、例年より金額を多く行う方が増えるものと考えられます。

最後に、今回の税制改正は、納税者にとって暦年課税は改悪、相続時精算課税は改良になったため、年齢や財産状況によって考慮すべき要素が増えてしまい、判断が難しくなるのは言うまでもありません。今後は今まで以上に、相続税対策の王道である「時間をかけてコツコツと」がさらに有効になってくるのではないでしょうか。そのためには相続対策が必要なのかをいち早く把握し、その対策に着手する人が大きなメリットを獲得するのではないかと考えております。

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