2023.04.14
個人事業主の税務調査、なぜ交際費は否認されるのか?国税OBが税務調査の裏側を解説
法人税と所得税における交際費の取扱いは、大きく異なります。法人税の場合は、一定の金額のみが損金として認められ、それ以外は…
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Column
2023.06.16
行政指導とは、”『行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。』”(行政手続法第2条第6号)とされています。
e-Gov法令検索「平成五年法律第八十八号 行政手続法」
税務署の担当者が行う行為は、税務署長の代理として行う行為であると言われています。そして、税務署長が行う行政指導という行為は、特定の納税者に対して適正な納税義務の履行の確保を目的として、納税者の自発的な意思に基づく協力を求めるものであると言われています。あくまで、協力を求める訳ですから納税者に対して法律上の義務を負わせるものではないことになります。
はじめにで書いたように「あなたが提出した確定申告書に〇〇〇の誤りがありました。申告書の内容を見直して、誤りがありましたら、修正申告書を提出してください。」という言葉を思い出してください。申告書の内容を自発的に見直して、もし誤りがあったら、修正申告書の提出をお願い(要請)しているのです。
このように電話で修正申告書の提出を勧奨された場合の取扱いについて、国税庁は、手続通達1-2で”『特定の納税義務者の課税標準等又は税額等を認定する目的で行う行為に至らないものは、調査に該当しない』”と規定しています。
国税庁第1章 法第74条の2~法第74条の6関係(質問検査権)(「調査」に該当しない行為)
税務調査のように課税標準や税額を認定する目的ではなく、単に確定申告書の内容に誤りがあったため、自主的に修正申告書の提出をお願いするという行為は、単なる行政指導であり、税務調査には該当しないのです。
単なるお願いですので、具体的に誤りの内容や計算方法を聞くことができないと思われるかもしれませんが、税務署の担当者に詳細な説明を求めることに何の問題はありませんので、必ず、説明を求めるようにしましょう。
もう一歩踏み込んで、税務署から行政指導の内容を書面で交付を受けることはできるのか、という点も気になります。
これは、残念ながら書面での交付を求めることはできません。行政手続法第35条(行政指導の方式)第2項において、交付を求められたときには、交付しなければならないと規定されているものの、この規定は国税通則法第74条の14において、適用除外となっているため税務署に対して電話で話した内容を文書でもらいたいと言っても絶対にもらえません。
国税における手続通達によると、調査とは、”『国税(国税通則法第74条の2から国税通則法第74条の6までに掲げる税目に限る。)に関する法律の規定に基づき、特定の納税義務者の課税標準等又は税額等を認定する目的その他国税に関する法律に基づく処分を行う目的で当該職員が行う一連の行為(証拠資料の収集、要件事実の認定、法令の解釈適用など)をいう。』”としています。
第1章 法第74条の2~法第74条の6関係(質問検査権)(「調査」の意義)
この調査に該当すると、税務署の担当者は質問検査権の行使ができることになります。納税者にとっては、受忍義務(調査を受ける義務があるということ。)を負うことになりますので、正当な理由がなく納税者が税務署の質問に対して答えない、もしくは、虚偽の回答をする(不答弁等といいます。)などは、刑罰の対象になる可能性があります。
このように税務調査は一種の強制力を行使して行うことから、税務署の担当者は「調査」であるのか、「行政指導」であるのかを納税者に対して明示して行う必要があります。
税務署の担当者が税務調査を行うには、国税通則法に規定された税務調査手続きに基づき、納税者に対して実地の調査を行う旨の事前通知を行わなければいけません。もちろん、事前通知を行わないことも税務署には認められていますが、事前通知を行わないことの相当の理由がなければ、事前通知を行うことになっていますので、突然の電話で修正申告をお願いするようなことは、当然、税務調査には該当しないと言えます。
突然の電話による行政指導に従って、修正申告書を税務署に提出した場合、修正申告により発生した追加の本税額を納付しなければいけません。
この修正申告書は、調査の事前通知がある場合や調査による更正等の予知していることを前提として提出したものではありません。あくまで税務署からのお願い(要請)に基づいて自主的に自らの申告内容を見直した結果、誤りを確認したため、自主的に提出したものですので、過少申告加算税等を賦課されることはありません。
但し、延滞税は法定納期限までに完納しないときに発生するため追加の本税額が発生した場合、当然、延滞税も発生することになります。
現に調査を受けている訳ですから、申告内容に誤りがあれば、追加の本税額及び加算税は当然のごとく発生します。
しかも、調査の結果によっては、過少申告加算税ではなく、加算税額が多額になる重加算税(仮装や隠ぺいにより申告した等の場合に追加の本税額に基づき計算される加算税)などを賦課されることも考えられます。
延滞税は、行政指導の場合と同様に、法定納期限までに完納しないときに発生するため、追加の本税額が発生した場合、当然、延滞税も発生することになりますが、重加算税の対象となった本税額の有無で延滞税の計算が違ってきます。
修正申告書による追加の本税額のうち、過少申告加算税の対象となった本税額の延滞税は法定納期限から1年間が延滞税の計算期間となります。行政指導による自主的な修正申告についても同様の取扱いになります。
このように延滞税の計算期間を法定納期限の1年間までとする取り扱いを「延滞税の額の計算の基礎となる期間の特例」といいます。
この特例は、重加算税の対象となった追加の本税額には適用がありません。したがって、重加算税が賦課された場合の延滞税は追加の本税額を納付するまで、ずっと延滞税が課税されることになります。しかも法人の経費になりません。
修正申告書を税務署に提出するという行為は同じでも、以上のように行政指導と税務調査とでは、追加の本税額に違いがないものの、加算税や延滞税の取り扱いが大きく異なっています。
もし、税務署から連絡があった場合、「行政指導」であるのか、それとも「税務調査」であるのか、必ず確認してください。
税務署の職員は納税者に対して、行政指導であるか税務調査であるか明示する義務がありますので、あやふやな連絡であった場合には絶対に確認が必要です。
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