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2023.07.06

役員退職金の限度っていくらですか?

役員退職金の限度っていくらですか?
役員退職金には、2種類の限度がございます。

法人税法上、損金として認められる適正額か否かと、法人が確実に支給できる額か否かとなります。全額損金とならなくても多額の退職金を支給したい場合、会社で支給できるのであれば後者の限度を考えることになりますが、そこまで体力のある会社は多くはありません。
(逆に法人税の限度額まで支給余力がない場合も後者の限度となります。)

通常は、会社の経営状況、財務状況などを気にしながら支給していきますので、今回は法人税の視点で考えていきたいと思います。

役員退職金とは・・・

役員退職金とは、役員が退任した際に支給する退職金です。「役員退職慰労金」の科目で計上されるのが一般的で、取締役や監査役が会社を退任するときに、役員の在任中の職務の遂行に対する対価として支払われます。法人税では取締役の退任登記をせずに社長から会長になったりと、実質的に退職したのと同様になれば退職金の支給も認められます。

金額も多額になることが多く、企業側にも節税対策や事業承継対策としてのメリットがあります。ただし、役員退職金の金額が合理的でない場合、税務調査で否認されるリスクもあります。また、多額の資金を要するため資金繰りの悪化に繋がるデメリットもあります。

法人側では所得の圧縮につながることが期待できますが、一方、支給を受ける役員側はその受給額について所得税が課税されます。以下の算式で算定されます。

①(役員退職慰労金支給額-退職所得控除額)×1/2=退職所得金額
②退職所得金額×所得税率-控除額=所得税

※勤続年数が5年以下の場合には、退職金の優遇税制である所得を1/2にする算式が使用できなくなるため注意が必要です。

役員退職金の法人税の考え方・・・

役員に対する退職金は、不当に高すぎなければ損金に算入することができます。
「退職金の金額が適正であるか」「損金計上時期に問題はないか」「退職金を支給するための手続きはされているか」などは、十分に注意して処理を行うことが重要です。

~退職金の金額が適正であるか~

適正額の計算手法として最も多く採用されているのが、功績倍率法と言われるものです。

役員退職金の適正額 = 最終月額報酬 × 勤続年数 × 比較法人の功績倍率

功績倍率には、ルールがあるわけではなく、退職する役員の在籍中の貢献度を考慮して倍率を決めることになります。同業種・同規模・同一エリアの他法人との比較で妥当性が検討されますが、一例をあげるとすると役員の功績倍率は以下のようになっています。

代表取締役(創業者)・・・3.0
専務取締役・・・2.5
常務取締役・・・2.0
取締役・・・1.0~1.5
監査役・・・1.0~1.5

この功績倍率を高く設定すると、役員退職金が高額になってしまいますので、税務調査の際に不相当に高額な部分については損金として認めてもらえないことがあります。(代表取締役の功績倍率が3倍を超えると税務署に目を付けられると昔から言われております)役員退職金を支払う際には、予め、役員退職金規定を整備して、適正な功績倍率を決めておくことが必要です。

なお、最終月額報酬が過去の勤続期間の平均報酬月額より低い場合には、平均月額報酬を使用するのも一つの案となります。

~損金計上時期~

役員退職金が損金として計上できる時期(損金算入時期)は、原則として、株主総会の決議等によりその支払額が具体的に確定した日の属する事業年度になります。ただし、役員退職金を実際に支払った日の属する事業年度に損金として計上することも認められています。

したがって、決議日と支給日の間で決算をまたぐ場合には、決議日の属する事業年度で計上したい場合は未払計上が認められます。

また、分割払いも認められておりますが、3年を超えるようですと役員側での所得税の計算で退職所得ではなく退職年金として取り扱われ税金も多くなってしまう可能性があります。

なお、常勤役員が非常勤役員になった場合など実質的な退職と取り扱う場合の退職金については、未払計上は認められませんので資金繰り含めて注意が必要となります。

~支給手続き~

役員退職金は、定款の規定または株主総会の決議によって支給する金額を決める必要があります。通常、定款で規定している会社は少ないので、ほとんどの会社では株主総会の決議によって決定しています。

多くの会社は事前に退職慰労金規定を策定しておいて、その規定通りに支給額を決定し、支給時期など含めて決議をされています。
退職慰労金規定は上述した功績倍率法などの退職金の算定方法を定めていたりします。

今後のために・・・

役員退職金の支給は頻繁にあるものではありませんが、大きな経費となるため会社にとっては経営上大きな問題となります。また、役員個人にとっても多額の税金の対象にもなりますので、どの程度税金がかかるのかや、どの程度法人側で費用として計上できるのかは検討された方がよいと思います。

また、今回は詳細を記載しておりませんが、単純に退任しない場合などの税務上の要件などもありますので、算定方法や資金含めて計画的に整備していくことをおすすめいたします。

参考までに下記のリンクからご自身の退職金の目安をシミュレーションすることが可能ですのでご紹介いたします。

エヌエヌ生命保険株式会社
役員退職金の相場/簡単シミュレーター/社長の功績倍率データ
https://www.nnlife.co.jp/bizd/taishokukin/simulation/

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