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萱野修弘
G.S.ブレインズ税理士法人 執行役員
東京都千代田区有楽町、日比谷、銀座の税理士法人 G.S.ブレインズ税理士法人
会社が成長していけるノウハウをご提供するG.S.ブレインズコンサルティング株式会社
Column
2024.01.27
非上場株式は上場株式と異なり証券取引市場で取り引きされているわけではなく、非常にその価値の見えにくい財産です。ただ、業績も良く順調に利益を積み上げている会社であれば、当然相続時の評価額も高くなる可能性が非常に高いです。
評価額が高い非上場株式を相続するということは、当然相応の相続税が課されることとなります。その時に非上場株式の現金化しにくいという点が下記の様な問題につながります。
非上場株式の価値が高く遺産総額が大きいが、その遺産の内の現預金が相続税額に対し少なく、相続税の支払いが困難。
その様な問題を解決するための方法として事業承継税制の活用が検討されます。
ただし、その要件や手続きの多さから実際の適用を悩まれる方が多いのが実情です。
過去のコラムで事業承継税制の概要に触れておりますので、気になる方は是非下記の記事も併せてご覧ください。
【関連コラム】特例事業承継税制の申請期限まであと1年!
さて、ここからが今回の本題です。
前項とは反対に、中々業績が伸びずこれからの会社や先行投資中でこれから伸びていくような会社、あるいはコロナ禍の様な苦境に立たされ業績が落ち込み、不本意ながら債務超過となってしまった会社の非上場株式については何の問題もなくスムーズに相続税手続きが進むでしょうか。
当然、非上場株式の評価額が低ければ前項で記載したような税金面での問題は生じにくくなります。複雑な事業承継税制の適用も考えることなく、相続税の手続きに臨める可能性も高くなります。
ただし、その様な状況だからこそ、あるいは過去にその様な状況があったからこそ、多く潜みがちな問題もあるのです。
その一つが、その会社のオーナー(相続における被相続人)からの貸付金です。
これも相続時には問題となることが多い財産の一つです。
まさにそれが問題となった事例を一つご紹介します。
「多分相続税はかからないと思うのですが…」ということでご相談に来られた方です。
初回面談で得られた前提条件は下記の通りです。
ただし非上場会社について、相続人は全く関与しておらず、被相続人が一人で管理をしていたそうです。
相続人から得られたその非上場会社に関する情報は、
・被相続人が一人でやっていた会社でここ何年も稼働していないと思われる…
・毎年被相続人が納税(均等割のみ)はしていたっぽい…
・納付書控はあったが申告書や決算書は見たことがない…
・会社の通帳が見つかったが数万円しかはいっていなかった…
という内容でした。
これだけでは非上場会社に関する情報が少なく、財産総額を判断しきることができませんでした。
また、稼働もなく預金も少額ということから、非上場株式そのものの評価額は低いであろうということを想像しましたが、同時に被相続人(社長)への貸付金の存在を危惧しました。
そこで、申告期限まで時間もあり、被相続人が毎年申告納税をしていたという事実から、もう少し自宅で申告書及び決算書を探してもらうことにしました。
そこから約1ヶ月、申告書及び決算書が発見されました。
決算書を見たところ予感は的中。
その内容は概ね下記の様な内容でした。
結果、相続財産は下記の通りとなります。
一転、基礎控除を超えて相続税申告が必要な状況となったのです。
やはり将来相続するであろう財産をしっかりと把握しておくことは非常に重要です。
非上場株式の換金性の低さは上述の通りですが、前項に記載した貸付金もまた同様です。
会社の資金が潤沢であれば即返済を受けてお金に換えることが可能ですが、前項記載の会社のように資金が枯渇している状況であれば、権利はあるのに返済を受けられない、つまりお金に換えられないということになります。
それは相続税において、税金が課せられるのに、それを支払うための資金がないということにつながります。
今回ご紹介した非上場株式や貸付金の他、不動産も場所によっては即時換金が難しい場合もあります。
もしそのような財産が相続財産に占める割合の大半である場合、将来そこに係る相続税の納税に困難を要することが想定されます。やはりバランスは重要です。
相続財産をしっかり把握できていないがために招くアンバランスもあれば、節税だけを考えていた故に生じるアンバランスもあります。
上記の通り価値があっても即お金に換えられない財産が多い場合、税金の大小ではない大変さを伴うこともありますので、相続財産の把握、見直しを一度されてみてはいかがでしょうか。
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