仕事をする上で一番思い通りにならないのが「人」です。自分は相手のためにと思っていることでも、なかなかその思いが伝わらないことがあります。

今回のご質問も部下のためを思って伝えているのですが、その思いが伝わっていないのです。どうしたらよいでしょうか考えていきましょう。

時代とともに仕事のやり方も変わります。
10年前までは、思いが伝わるまで繰り返し伝えることで伝わりました。「そんなに何回も言うならやってみよう」とか「なぜそんなにいうのだろう」と部下が考えたからです。

ところが今は何回も伝えると「しつこいな」「また同じ話か」と聞き流されてしまうことが多いのです。言っても言っても伝わらないどころか、相手は心の中で反発します。反発と言っても言葉に出すのではなく、行動しないのです。

研修やコンサルティングをしていると、よく受ける質問があります。それは「相手に伝わる伝え方を教えてください」「相手が行動する話し方を教えてください」という内容です。伝え方や話し方ではないのです。相手が聞こうとしなければ、どんな伝え方や話し方をしても伝わらないのです。

今の時代に合ったアプローチは「聞く・質問する」ことです。「言う・伝える」から「聞く・質問する」へ自分が変わることです。

マーケット拡大の時代は人口も増え、右肩上がりの時代です。この時には仕事をするうえで指示・命令型が効果ありました。上司が指示・命令し、部下がそれを忠実に行う。だから上司は「言う・伝える」ことが大切だったのです。

今は一人ひとりが考えて行動し振返る「自律型人財」の育成が大切です。

何をしたら成果が出るかわからない時代です。また一人ひとりが考えて行動しなければ成果が出ない時代です。上司が言ったこと、伝えたことをする受身型では成果がでないのです。

自律型人財を育成するためには「聞く・質問する」アプローチが大切なのです。

「言う・伝える」だと、いつまで経っても上司が指示・指摘し続けなければいけません。結果「何度言ったらわかるんだ！」となってしまうのです。
時代とともに教える育てる側も変わることです。上司が部下を教えて育てる時代から、上司も部下とともに成長する＝変化する時代です。

聞くことで人間関係をつくり、質問することで考えさせることが今の時代では必要です。

人は相手が正しいことを言っているから話を聞くわけではありません。この人だったら聞こうとなるのです。この人＝人間関係ができている人です。

上司が部下との人間関係を築くには、部下の話を聞くことです。仕事の話だけでなく仕事以外の話も聞いてみましょう。すると部下は「私のことを理解しようとしている」「私のことをわかろうとしている」と感じるのです。自分のことをわかってくれる人に良い印象を持ち、心開きます。

反対に一方的に伝えているだけでは、部下は「私のことを全然理解しようとしていない」「私のことを全然わかっていない」となるのです。これではいくら伝えても伝わらないのです。聞くことで良い人間関係を築くことです。

次に質問することです。「どうしたら良いと思う？」「それをしたらどうなると思う？」「それをしなかったらどうなると思う？」と質問し、考えさせることです。繰り返し繰り返し伝えると、相手は考えなくなるのです。なぜそれをしなければいけないのか、どうしてそうするのかを考えない＝わからないのでやらないのです。
人は人から言われたことはやりたくありません。自分が気づいた時、理解した時に自ら動くのです。相手に気づかせる・理解させるには、伝えるではなく質問することです。

是非部下には質問してください。そしてどのような質問をしたら気づくのかを試行錯誤して自分の部下にあった質問の仕方を見つけることです。

人は自分で気づいた時、自分で理解した時に動くのです。そして、継続するのです。

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