経営に役立つコラム

Column

2022.10.18

「人としての成長の壁」が部下との関係を壊している!/管理者に残る「人としての成長の壁」3

部下が教えたとおりに動いてくれない…
正しいことを伝えているのに部下に響いていない…
部下の気持ちが離れているように感じる…

このようなときは、自分でも気づかないうちに部下へ一方的な伝え方をしており、部下が理解・納得できていない可能性があります。

実際に行動する部下の立場に立って考え「相手に何を伝えるか」ではなく、「どういう伝え方をすれば相手に伝わるか」を意識することで状況は改善されます。

責務をしっかり果たそうと思うゆえに…

8月のメルマガ本欄から、管理者にかかわる重要なテーマとして「人としての成長の壁」について言及しています。今回が3回目です。

管理者向けの本やセミナーなどではあまり登場して来ないテーマなのですが、部下を育てたり、モチベーションアップを図ったりする場面では欠かせない問題だと私たちは考えております。

私たちG.S.ブレインズグループがマーケット縮小時代の中小企業向け経営戦略として皆様にお伝えしている≪成長の三要素経営≫(三要素とは、組織づくり・ビジネスモデル・マーケティング+数値の裏付け)では、「組織づくり」に位置する不可欠のテーマとして捉えています。

とはいうものの「人としての成長の壁」というキーワードに皆さんはあまり馴染みがないと思いますので、改めてお伝えしましょう。

人としての成長の壁とは

まずは、別掲の図を改めてご覧ください。

係長や課長や店長、あるいは部長や取締役となった管理者の方々は、例外なく輝かしい実績を持っています。輝かしい実績は業界の中でも有名になっているかもしれません。

そのような優秀な経験を経て管理職の地位に上がっている人は、その実務経験をベースにして自信をもって管理者としての仕事を進めていきます。いうまでもなく、その仕事の中には当然、「部下育成」という重要な責務が含まれています。

優秀な実務経験を持つ管理者は、当然の責務として日々、部下育成に勤しみます。喜んで、豊富な実務経験のもとこの責務を果たしていくことでしょう。この自信に満ちた日々が「人としての成長の壁」(いわば、内面の悪玉)を育ててしまうのです。

自分主体、無意識・感情、正義感に気づかないと部下が離れていく

もう一度、図をご覧ください。左側の四角の中に書いてあるのが‟悪玉〟の症状です。大枠のワードでいえば、「自分主体」「無意識・感情」「正義感」が悪玉そのものです。

「自分主体で何が悪いの」「正義感をベースに部下とのコミュニケーションを進めていくのが、なぜ悪い?」等々の声が飛んできそうですが、悪い症状なのです。何が悪いのでしょうか。

自己の実績をベースにして指導すること自体はもちろん、悪くはありません。しかし、「私はね……」から始まる自慢話が出てくると“アウト„です。部下は聞く耳を持たなくなってしまいます。

このことに気づかず一方的に自己自慢を続けていたら、部下の気持ちは上司からどんどん離れていきます。こうなると、指導どころではなくなります。そのことに上司も気づきます。気づいても、なお続ける、あるいは意図的に言い方を変えて一所懸命に自分の経験を話し続けてしまう……このときにこそ「人としての成長の壁」、すなわち内面の悪玉が台頭してしまうのです。

正義感の強い管理者こそ要注意!

この悪玉は、正義感が強い人に生まれてしまいがちです。

自分の価値観は常に正しいと思い込んでいる管理者。そのため、コミュニケーションの相手に対して自然に高圧的な態度、上から目線な態度を取ってしまう……こういうタイプの人は立場が上になればなるほど多くなってきます。
このタイプになってしまうと、自分の考えを否定されても聞く耳を持ちません。相手が部下であれば余計にそうなってしまいます。

「彼にはもっと教え込まなければ」と、相手の先々を考えてどんどん力強く教えようとします。

自分が真面目に、一生懸命努力して成果を出してきたからこそ、「こうあるべきだ」という思いが強くなっているのです。その「べき論」が強い言い方や伝え方になってしまいます。

伝えていることは間違っていないものの、自分の一方的な正義感だけでは周りの人は動きません。部下の場合は言われた通りにやらざるを得ないわけですが、こういう流れが毎日のように続けば、必然的に「あの上司では、こっちの気持ちが持たない。やる気が出ない」と、気持ちは離職に向かっていきます。

考えるべきは伝える相手の理解と納得

一番大切なのは相手の立場になって考える・伝えること

一番大切なことは、相手の立場になって考えること、相手の立場に立って伝えるべきことを伝えることです。それができないという状態こそが「人としての成長の壁」にぶち当たっていると言えるのです。

自身の正義感から、「こうあるべき」という決めつける伝え方、相手(部下)が納得できていない状態で「私はこう考えるのですが」と自分の意見を言い出したり、質問したりすると、「それは違う」「君は全然わかっていないな」などと否定する管理者はゴマンといます。いわば全面否定の言葉ですが、これをかぶせられると、相手の気持ちはどうなっていくでしょうか。

上司は多くの知識と経験を積み上げてきたからこそ「しっかりと教えたい」との思いが強くなります。自分の経験が絶対だと強く思うがゆえに「こうあるべきだ」という伝え方になってしまいます。

しかし、実際に行動するのは誰でしょうか。上司ではなく部下です。行動する本人が心底納得しなければ到底、仕事は上手く運びません。疑問を持ちながら行動すれば失敗します。とんでもない損害を生むことだってあります。

相手の理解・納得が得られないと失敗につながる

良かれと思って正義感から熱心に伝えた結果が期待とは真逆の結果をつくり出してしまう。こうなる要因は、ほとんどの場合、実際に行動する相手の理解・納得を得ていないままに動かしたことにあります。

上司は言います。「なんだ君は、私の言うことがわかっていなかったのか」と。わかっていなかったのです。なぜわかっていないまま、中途半端な理解で行動してしまったのでしょうか。

簡単にいえば、指示を伝えられたときに、「早くこの上司の上から目線の指示から離れたい」と思ったからなのでしょう。上司は良い結果を生むために自分の経験や知識を一生懸命に伝える。しかし、部下のほうは上司の言葉を全部吞み込むことが出来ず、嫌気が差してくる。──失敗は、こういう状況から生まれるのです。

「どう伝えるか」は相手側から組み立てる

当たり前のことですが、上司と部下の関心度や理解度は大きく違っています。部下の関心度もしくは理解度が低い場合、一方的に「こうあるべきだ」と言われても到底理解できません。部下は、メモすら取らないでしょう。

教える側は「なぜわからないんだ」という気持ちが強くなり、気がつくと無意識に感情を出してしまうこともよくあることです。

「いいから、私の言うことをしっかりやればいい。いつまでも君に付き合っていられないんだ。とにかくがんばってやってくれ!」

この結果が大きな損害を生んでしまう……。部下はショックで立ち上がることが出来ず、やがて離れていくことでしょう。

一方、聞きたかったことに対して上司があれもこれもと自分の経験を語り過ぎて、部下がうんざりするケースもあります。役立ててほしいという想いが強いからなのでしょう。しかし、部下からすると、「そこまで聞いていない、結局いつもの自慢話か」という例も沢山あります。

どうすればよいのでしょうか。

相手の相談内容をまずは"聴く"

まず聴く。相手の相談内容を具体的に深く聴くこと、何を聴きたいのか(テーマ)、何のために(目的)、どうしたいのか(出口)、そして相手がどこまで理解しているかの確認も必要です。

「相手に何を伝えるか」ではなく「どういう伝え方をするか」を十分に考えてほしいと思います。相手にどのように伝わっているか──これが何よりも大切なのです。

ものの見方・考え方は「相手側から組み立てる」のです。(この「ものの見方・考え方」については、後日詳しく解説します)

上司から見て絶対に必要・大切だと思っていることでも、相手の立場に合わせた伝え方をしなければ伝わりません。

「こうあるべき、こうしなさい」(MUST)という伝え方から、「こうした方が良いのでは」、「こういう方法もあるよ」(MAY)といった伝え方へ変えていただきたいと切に思います。MUSTで説得しても、相手には伝わらないだけではなく、相手のモチベーションも下げてしまいます。相手に考えさせましょう。何が問題なのか、目的と出口はなにか、そしてどうすればよいのか。

当然時間がかかります。時間をかけましょう。結果、部下は成長していきます。部下は成長実感を持ちます。そして、そこに導いてくれた上司、気づかせてくれた上司を信頼・尊敬します。

こうした流れを築いて「人としての成長の壁」を乗り越えていきましょう。

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近藤浩三

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近藤浩三

G.S.ブレインズグループ代表 税理士

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