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2024.12.10

税務調査の再調査について

税務調査の再調査について
税務調査は、原則として一度調査を実施した年度について、再度、調査を実施することはありません。

ただでさえ憂鬱な税務調査です。一度、調査を実施された年度について、また調査をされるのは、とても苦痛を伴うものだと思います。ましてや、前回調査の時に是認通知書(正式な名称は、「更正決定などをすべきと認められない旨の通知書」といいます。)を受取っている場合など、なおさらではないでしょうか。

再調査に関する税法の規定

では、再調査について税法はどのような規定をしているかを確認しましょう。税法の中の国税通則法にその規定があります。

国税通則法第七十四条の十一第五項では、「新たに得られた情報に照らし非違があると認めるときは、第七十四条の二から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)の規定に基づき、当該通知を受け、又は修正申告書若しくは期限後申告書の提出若しくは源泉徴収等による国税の納付をし、若しくは更正決定等を受けた納税義務者に対し、質問検査等を行うことができる。」とされており、1度、税務調査を行った年度であっても、新たに得られた情報から非違(税務上の誤り)があると判断された場合には、再調査(質問検査権の行使)ができるという規定になっています。

この通則法の内容を受けて、国税庁長官が発遣する事務運営指針も公表されていて、「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)」(改正:令和5年11月29日)」の第2章基本的な事務手続及び留意事項において、再調査の判定が書かれており、「更正決定等をすべきと認められない旨の通知をした後又は調査(実地の調査に限る。)の結果につき納税義務者から修正申告書等の提出若しくは源泉徴収に係る所得税の納付があった後若しくは更正決定等をした後に、当該調査の対象となった税目、課税期間について質問検査等を行う場合には、新たに得られた情報に照らして非違があると認める場合に該当するか否かについて、法令及び手続通達に基づき、個々の事案の事実関係に即してその適法性を適切に判断する(手続通達6-7、6-8、6-9)。」とされています。

これらの法律及び(国税庁の)内部通達から分かるように、「新たに得られた情報に照らして非違があると認める場合」にのみ、再調査が実施できる訳ですから、それ以外は調査ができないことになりますので、税務調査の再調査というのは、確率的には、とてもレアなケースであるとお考えいただいていいと思います。 しかし、どんなことで再調査になるかケース別にお話ししたいと思います。

再調査になるケース

(1)調査した年度以外の申告内容や取引内容から過去に調査を行った年度に非違がある可能性が高い場合

ケース⑴としては、調査した年度以外(ようは、まだ調査をしていない年度)の申告内容や取引内容から過去に調査を行った年度に非違がある可能性が高い場合になります。

過去に調査を受けたが、まずいと思ったものの運よく、修正申告を求められなかった場合などが該当します。調査を受けたが否認されなかったといっても調査対象期以後について自主的に是正を行っていない場合など、次回調査で調査官から指摘を受け、過去の調査済みの年度まで芋ずる式に再調査をされるパターンです。調査があったら、指摘を受けなくても、まずいと思った事項については、進行期(まだ申告期限が来ていない年度)で是正が必要となります。

(2)取引先に税務調査が入り、取引先にある生類や資料等から、非違に繋がる情報が得られた場合

ケース⑵としては、取引先に税務調査が入り、取引先にある生類や資料、もしくは証言から、非違に繋がる情報が得られた場合になります。

このケースは、何とも予想がつかないので、対処のしようがないと思いますが、自分自身の不正計算(いわゆる重加算税の対象となるような行為)は、絶対にやらない、そして、取引先の不正計算の手助けは絶対にやらないということを徹底してください。そうすることで、無用な再調査も防げると考えます。

(3)前回調査時に内容が解明できず、外国の税務当局に租税条約の情報交換制度を使い、取引内容の解明を依頼していた事例

ケース⑶としては、前回調査時に内容が解明できず、外国の税務当局に租税条約の情報交換制度を使い、取引内容の解明を依頼していた事例になります。この場合、情報交換制度を使い、外国の税務当局に情報提供を依頼している訳ですから、未解明の懸案事項はペンディングの状態にあると言えます。

外国の税務当局からの回答は「新たに得られた情報に照らして非違があると認められる情報」に当たりますので、再調査もやむを得ないものであると考えます。

(4)法定調書や資料せんから過去の調査済みの年度に係る新たな情報がもたらされて、非違が想定される場合

ケース⑷としては、法定調書や資料せん(法定外で収集した情報や国税当局自身が収集した情報及び、いわゆるタレコミ情報など)から過去の調査済みの年度に係る新たな情報がもたらされて、非違が想定される場合になります。このケースは、大変少ないと思います。

何故なら、前回調査時で、これら法定調書や資料せんは、確認済みで古い年度のものが新しく税務署に回ってくるとは、通常、考えられないことから、あまり無い事例ではないかと思います。

以上のような再調査は、税務署が自ら判断して行う再調査になりますが、納税者が税務署の調査結果に納得がいかず、再調査を希望することもできます。

修正申告書を提出しない場合は税務署は更正処分を行うことに

税務署が下した判断に納得がいかず、修正申告書を提出しない場合、税務署は更正処分を行うことになります。
もちろん、この更正処分の内容(理由付記の内容)について、争うことも出来ますが、調査そのものをもう一度やり直ししてほしい場合(調査官の事実関係の認識に重大な誤りがあり、認識の是正を求めても一切、認識を改めないなど、調査に重大な欠陥があるのではないかと思っている場合など。)には、処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内に「再調査の請求書」を所轄税務署長に提出すると、税務署内で再調査をするべきかどうかを判断し、再調査すべきとの判断になった場合に再調査が実施されます。

このように、税務署が再調査を実施するには、ハードルがありますの、簡単には実施されませんが、全くないとも言えませんので、万が一を考えておくことも必要ではないかと思います。

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G.S.ブレインズ税理士法人 顧問

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