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Column
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贈与税の調査を担当するのは税務署の資産課税部門になります。資産課税部門では、相続税、贈与税や土地等及び有価証券等を譲渡した場合に課税される所得税等についての調査及び相談業務を行っています。
これら税目の税務調査は税務署だけでなく、国税局の課税部にあります資料調査課においても行われていますが、国税局の場合、基本的に相続税の調査をメインとしています(税務署の資産課税部門も同様です。)ので、贈与税の調査の大半は税務署が実施しているといっても過言ではありません。
そもそも、贈与税とはどのような場合に課税されるのかといいますと、他の個人から財産を貰った場合に課税されると理解してもいいと思いますが、それ以外に馴染みのない「みなし贈与」という言葉が出てきます。
国税庁のタックスアンサー№4402贈与税がかかる場合によると、”みなし贈与は、自分自身が保険料を負担していないにも関わらず保険金を受け取った場合や債務免除を受けた場合などには、贈与があったとみなされて課税される”とされています。
贈与税の対象とならないものを列挙しますと、
①法人から贈与された財産
②奨学金支給のための特定公益信託
③選挙候補者が受け取る金品
④親が子どもに与える一般的な金銭(生活費・教育費・学資金・結婚費用)
⑤見舞金や香典、贈答
⑥故人が亡くなる前7年以内に受けた贈与
⑦金融機関から受けられる教育資金の一括贈与(上限1,500万円)
⑧金融機関から受けられ子育て資金などの一括贈与(上限1,000万円)
などが主なものになります。(⑥は、贈与を受けた日から7年以内(2024年1月1日から、それ以前は3年)に贈与者が亡くなってしまった場合には、その生前贈与はなかったものとみなされるため、相続財産に加算され、相続税の課税対象となることから、贈与税の対象にならないとされています。)
なお、贈与税は、1月1日から12月31日までの1年の間に贈与を受けた財産の合計金額から基礎控除(110万円)を差引いた額に対して課税されます。
また、平成27年以降の贈与税の税率は、一般贈与財産と特例贈与財産に区分され、税率が異なりますので注意が必要です。
一般贈与財産は、下記の特例贈与財産の贈与の場合に、次の表により税率が決まり税額が計算されます。他人同士の贈与の場合や兄弟間、夫婦間、親から子のへの贈与で子が未成年者の場合に使用します。
特例贈与財産は、例えば、祖父から孫への贈与、父から子への贈与で子が成年の場合に次の表により税率が決まり税額が計算されます。すなわち、直系尊属(祖父母・父母等)から贈与された年の1月1日に18歳以上の者(子・孫等)への贈与に使用します。(但し、「18歳」とあるのは、令和4年3月31日以前の贈与については「20歳」となります。)
この時、注意しなければならないのは、夫の父から妻が贈与を受けるものも、この特例贈与財産に該当すると勘違いをするケースがありますが、この場合には一般贈与財産となりますので、お間違いようにお願いいたします。
これらの税率の速算表は、基礎控除額の110万円を差し引いた後の金額を当てはめて計算してください。それにより贈与税額が分かるようになっています。
個人間の贈与というものは、毎年、定期的に行われるものではありません。税務署から見れば突発的に行われた贈与がその後に贈与税の申告書として提出されるということになる訳です。
法人税や所得税のように毎年、確定申告書が提出される訳ではないので、年度ごとの数字の推移を分析するということはありません。
したがって、法人税や所得税の税務調査のように帳簿や納品書・請求書・領収書などは登場しません。あくまで、個人間で行われた贈与の事実及び贈与された財産の種類・金額の確認が中心となります。
そのため、贈与税の調査が開始されるきっかけは、相続税の調査や法人税・所得税の調査を実施している過程に発見されることが多いです。
例えば、相続税の調査で銀行預金の入出金を調べていたところ被相続人の預金から孫名義の預金に資金が移動しているのを把握したなどということです。
この場合、孫名義の預金が贈与によるものか、それとも被相続人の名義預金であり、相続財産に含めるべき財産なのかといったところが調査の主眼になってきます。調査の結果、贈与であることが確認されたが、贈与税の申告がなされていないということになれば、贈与の調査が開始されることになります。
また、税務署や国税局の調査官は調査等のため銀行や証券会社に臨場して調査対象者の口座を調べる訳ですが、実際は、それだけではありません。調査対象者以外の口座についても調べています。そして、その内容を「資料せん」としてデータ化しています。データ化された資料は、国税当局の蓄積資料の一部となる訳です。
このような蓄積している資料情報を分析すると、中には贈与と思われる資金や財産の移動が発見され、これを端緒として贈与税の調査が開始されることになります。
贈与税の調査で一番重視されるのは、贈与の事実があるのか、贈与されたとされる財産の帰属は誰なのかということになります。
税務署の調査官が贈与の事実を確認するには外形的な事実をもってしか確認することはできません。そのため、贈与契約書を作成しているか、贈与税の申告は行っているかなどを確認することになります。
贈与税の申告をしているからといって、安心はできません。必ず、受贈者(財産を貰った人)にその財産を受け取ったという認識があるのかを確認します。
それ以外に次のようなことも聴取されます。
・財産の開設・購入時での申込を行ったのは誰なのか。
・契約書・申込書等の署名は誰がサインしたのか。
・通帳・権利書・会員権などの管理・保管を行っているのは誰なのか。
・財産に関わる郵便物の受取先は誰なのか。
・そして、財産の取得に係る資金の出所。
相続税の調査などで、贈与の事実を主張したいのであれば、これらの証拠書類の提示と事実関係の供述が出来ないと相続財産であるとの認定がされる可能性が高いといえます。逆に、贈与税の調査で贈与の事実を否定したいのであれば、これらに反証できる事実の提示と供述が必要となってきます。
今回は、一般的な贈与税の調査を中心に書かせていただきました。贈与税には、「直系尊属から住宅取得等資金を贈与された場合の特例」や「夫婦の間で居住用の不動産を贈与した場合の特例」といった特例が設けられています。これらについては、別の機会に書かせていただきたいと思います。
また、贈与税は相続税を補完する税であるとよく言われます。 相続税法では「被相続人からその相続開始前7年(2024年1月1日から、それ以前は3年)以内に贈与を受けた財産があるときには、その人の相続税の課税価格に贈与を受けた財産の贈与の時の価額を加算する。」としていますので、相続税と贈与税は密接な関係にありますし、贈与の有無は相続税の計算にも影響を及ぼします。
また、相続税を意識しないとしても(結果的には意識していることになりますが)贈与は日常から発生する可能性があると言えます。
親が息子や孫に「お金をあげる」「住宅の購入資金を援助する」など例を挙げれば、きりがないほどではないかと思います。
しかし、税務署は目を光らせて申告漏れを探しています。先ほど書きました住宅取得等資金の贈与などに関しては非課税となる優遇措置がありますので、贈与する前に税理士へ相談して適正な申告を行うことが必要であると考えます。
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