経営に役立つコラム

Column

2022.01.13

【予算を立てる5つのプロセス】成長企業が実践している正しい「予算」の立て方

成長企業が実践している正しい「予算」の立て方とは?
中小企業の「予算」の立て方について社長にご質問させていただくと、「実はきちんと教わったことがない」、あるいは「今やっている予算の立て方が本当に正しいかどうか分からない」という答えが返ってくるケースが度々あります。
予算は何のために立てるのか?
中小企業におけるこの質問に対する答えは、目標「利益」を決め、決めた予算を達成するためにほかなりません。今回は、成長企業が実践している正しい「予算」の立て方のポイントをお伝えします。

①予算は「利益」からの逆算で立てる

【売上】-【原価】-【販売管理費】=【利益】という損益計算書の構造はご存じかと思いますが、予算を立てる際に、「売上」からではなく「利益」からの逆算で立てていますでしょうか?
ここで言う「利益」とは、「必要利益」を意味します。会社により過去の設備投資状況や借入金の多少が違うため、「必要利益」は異なります。

年商・営業利益が同じ会社でも【必要利益】は異なる

例えば、同じ年商1億円・営業利益500万円の会社でも、
【A】借入金がゼロの会社
【B】借入金残高が3,000万円あり、毎年600万円元本返済する必要のある会社
では、借入金元本返済の分だけ【必要利益】は異なります。
さらに固定資産が加わると、固定資産に係る減価償却費の分だけ上記【必要利益】は変化を及ぼします。

よって【必要利益】を把握したうえで、「利益」からの逆算の発想で予算を立てていく必要が出てきます。

【必要売上】=【原価】+【販売管理費】+【必要利益】

と置き換えることで、会社にとって望ましい【必要利益】を踏まえた【必要売上】はどのくらいかと展開できますので、実践下さい。

②予算策定の出発点は「販売管理費」の分析

販売管理費についても、注意が必要です。過去3年間程度で生じた販売管理費の総額と内容について、きちんと把握・分析することが予算策定の出発点になります。どういった内容が、いくら、どの勘定科目に含まれているかを理解することは、毎月の月次決算で試算表を確認していない経営者にとって意外と煩雑な作業となります。

ここで生じている販売管理費が、売上の増減に伴い増減する性質のものであれば「変動販管費」として、また売上の増減に関わらず概ね一定額生じる性質のものであれば「固定販管費」として認識します。多くは「固定販管費」として認識していくかたちとなりますが、業種によって「運賃」・「水道光熱費」・「業務委託費」・「ガソリン代」などは「変動販売費」と捉えたほうが望ましい場合がありますので留意下さい。

そのうえで勘定科目数がおおくなりがちな「販売管理費」を、
A:人件費
B:戦略経費
C:固定費
D:一般経費
の4区分に分け予算を立てられると良いでしょう。販売管理費が総額でいくら生じているのかも、上記4区分ベースでしっかり把握下さい。

③「粗利額」で「固定費」を賄う

「販売管理費」の把握・分析ののち、この「販売管理費」と「必要利益」の合計額を賄う粗利(売上総利益)はいくらであるのか、言い換えると「必要粗利額」を算定します。

「粗利額」で「固定費」を賄えないということは、会社経営上の販売管理コストが現在の売上高もしくは粗利率では賄えていないことを意味しますので、そのような予算を継続的に立ててしまうことは会社経営が数字上成り立っていないことを意味します。

また「粗利額」で「固定費」+「必要利益」を賄えていない場合には、「粗利額」を構成する(a)売上増加策の検討 、(b)原価率低下策の検討 が必要となってきます。

④「利」は「元」にあり ~「原価率」の適正化

上記③の粗利額を満たすため、つぎに原価率の検討に入ります。

「利」は「元」にありのことばがあるように、適正な粗利額確保のためには適正な仕入値、あるいは原価率が確保されているのかを【主要商品別】や【主要取引先別】、【支店・営業所別】に分析・検討します。

この検討により改善すべき原価率イメージを持ったうえで、これを数字に反映させます。

⑤「売上」の分解

④と合わせて最後に売上の分析・分解に入ります。

まずは既存商品もしくは取引先の販売状況を、単価と数量に分けて分解していくことで予測します。現状から見通せる売上増加見込みのほか、売上減少見込みも織り込み、改善施策があれば改善施策を施した場合の数値を反映します。

この際、既存先だけでは望ましい利益からの逆算売上とならないケースが多々あります。その場合には、既存先への新規商品の投入、もしくは新規取引開拓による既存商品販売、のどちらかが活動上必要となります。新たな活動で増加させるべき売上を明確にし、予算を確定させるのです。

実際には、①から⑤へのプロセスを数回繰り返すことによって、現実的に妥当な目標利益や固定費・粗利・売上高を調整します。

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