経営に役立つコラム

Column

2025.03.10

法人クレジットカードの社員の不正利用事件

法人クレジットカードの社員の不正利用事件
法人クレジットカードの不正利用事件が発覚しました。経理担当の社員が「投げ銭」や旅行代にカードを使い続け、4年間で約4,300万円もの被害を出したのです。チェック体制の甘さや経費精算の慣習が、不正を見逃す一因となりました。
現在、法人カードの利用は増加傾向にあり、企業の管理責任が問われています。不正を防ぐにはどのような仕組みが必要なのか、今回の事件から学ぶべきポイントを整理します。

ほんの出来心から始まった私的利用

社員の経費精算に便利な法人クレジットカード。ある大手自動車メーカーの経理担当をしていた元社員が軽い気持ちで動画配信の「投げ銭」にカードを使ってしまった事件。初回は2019年4月、2回利用で3000円程度。「やってみたら使えた」し、何も聞かれないので続けていたといいます。4年弱で3262回、約4300万円の損害を会社に与えました。

生活に苦労はしていませんでしたが、趣味の「投げ銭」に多くが使われていました。ネット上でお気に入りの動画配信者にお金やギフトを送る「投げ銭」は新型コロナウイルス禍を経て急速に普及しています。会社では物品購入などの経理事務を担当し他の社員のカード管理も任され、退職などで返却されたカードの受取窓口でもあるのでそのカードにも手をつけるようになりました。推し活写真購入、旅行費用や、ジム費用、船舶免許取得等にも使っていました。

会社は匿名の通報を受けて内部調査で不正を確認、刑事告訴したのは2024年2月。背任容疑で元社員は逮捕されました。

法定の供述からは課題が浮かぶ

1.チェック体制の不備

・経費の承認時に明細書の添付が不要

・カードの返却窓口を一人に任せていた

・予算抑制より使い切る風潮であったので厳しいチェックを妨げた

2.組織文化の影響

部署内では経費削減より「予算の使い切り」が優先される風潮があった

3.責任の所在

上司の監督責任を問われ降格処分、会社の信用も失墜を免れなかった

社会的影響

業務効率化の一環で経費精算のために法人向けクレジットカードを導入する企業は増えています。日本クレジット協会によれば24年3月の法人カード発行枚数は約1170万枚。10年前と比べて1.8倍に増えています。会社と従業員の双方に利便性が高いのですが、その分管理には気を付けなければなりません。

再発防止には利用明細書の提出義務、カード利用履歴の定期的監査、複数人でのチェック体制を敷くほか、従業員への倫理教育、不正利用のリスクを周知させ、システムでも不正を自動検知できる仕組みの導入などを検討しましょう。

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