経営に役立つコラム

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2025.04.01

フィッシング詐欺の税務

フィッシング詐欺の税務
ネット上での金銭被害が増加する中、フィッシング詐欺に巻き込まれた際の税務処理が課題となっています。
法人の場合、損金処理が可能ですが、補償金の収益計上には複数の考え方があり、選択次第で税務上の影響が変わります。一方、個人の所得税では詐欺被害が雑損控除の対象外とされており、救済措置が限られている点にも注意が必要です。
こうした税務上のポイントを整理し、適切な対応を考えていきましょう。

フィッシング詐欺の被害は補償される

フィッシング詐欺による被害が急増しています。ネットショップやネットバンクなどをかたる誘導メールにうっかり応じてしまうとクレジットカード情報がもれ、知らないうちに誰かにカードを使用されていたということになります。

しかし、早く気づくことができれば被害額の全部または一部をクレジットカード会社に補償してもらうことができます。

収益計上時期には2つの考え方がある

法人税の扱いは、フィッシング詐欺による損失を発生主義により、被害が発生した事業年度の損金に計上します。

クレジットカード会社から受ける補償金の収益計上時期には、2つの考え方があります。1つは損失が発生したときに損害賠償請求権も確定したととらえ、同事業年度に収益計上する方法で、同時両建説といいます。クレジットカード会社の会員規約では補償される要件が示されており、回収可能額をある程度予測することができるので、債権を計上してもあまり問題は生じません。反対に債権回収の困難が見込まれる場合は、貸倒損失とできるまで税務上のハードルが高くなります。

もう1つは補償金の支払を受けることが確定したときに収益計上する方法で、異時両建説といいます。こちらは債権を計上しないので税務上のリスクは少なくなります。ただし、加害者が法人の役員や従業員の場合は、請求権が最初に確定してしまうので同時両建説の処理が求められます。

詐欺には雑損控除が適用されない

所得税の扱いは、被害額について雑損控除の対象が災害、盗難、横領に限定され、詐欺は対象とはならないとされています。過去の裁判では、振り込め詐欺による被害について盗難や横領が被害者の意思に基づくものでないことに対し、詐欺は被害者の意思に基づくことを理由として雑損控除の対象とならないとされたものがあります。

国税庁もこの判断を踏襲して、質疑応答事例やタックスアンサーでは、詐欺を雑損控除の対象外としています。

しかし、被害者から見れば不安をあおる督促にだまされてカード情報を提供してしまったのであって、刑法上の定義の違いからフィッシング詐欺による損害を雑損控除の対象としない取扱いは、SNSが生活の一部となる時代において法令の不備であるとも言えそうです。

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