2022.03.16
管理職が担っている部下育成の5大要素【その3・人を育てる技術⑦-認める・褒める技術】
この経営コラムでは、私たちG.S.ブレインズグループが独自に理論構築し、経営の柱にしているマーケット縮小時代の経営戦略「…
東京都千代田区有楽町、日比谷、銀座の税理士法人 G.S.ブレインズ税理士法人
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Column
2022.04.19
今回は、部下育成の6つのアプローチ<①知る、②聴く、③観る、④認める・褒める、⑤伝える・考えさせる、⑥任せる>のうちの5番目、「伝える・考えさせる」の解説です。なお、何回も繰り返しますが、「人を育てる技術」の出口は自律人財、すなわち「自ら考え、自ら行動する社員(部下)」を育てることです。
部下一人ひとりを自律人財に育て上げなければ、マーケット縮小時代を生き抜くことはできません。このことを脳裏にしっかり刷り込んで部下一人ひとりを育て上げていただきたいと思います。
さて、今月の本題「伝える・考えさせる」の育成技術に入りましょう。ここは、自分で考える社員(=自律人財)になるか、それとも何事も上司に頼ってしまう社員になるかの大事な岐路になります。
また、ここの岐路がマーケット拡大時代(過去の高度成長期)とマーケット縮小時代(現在の経営環境)の典型的な違いですから、ご自身がどうだったか、現在はどうしているか、よく振り返りながら読んでいただきたいと思います。
私が管理職の方々にいつもアドバイスしていることの一つなのですが、上司が部下に何かを伝えるときに細かすぎる指示や長々とした説明を当然のように繰り返しているケースが多く見られます。こういう指示・伝達の仕方を続けていると部下は育ちません。間違いなく自律できない社員、自分で考えない社員になってしまいます。
なぜ上司が細かいところまでアドバイスするのかといえば、心配だからなのです。そこには、若い頃の成功体験があります。ただ、その“若い頃„というのは多くの場合はマーケット拡大時代でのことです。または、拡大の時代のやり方で指導を受けた上司。
その成功体験は、ご自身の中では誇り高い功績として大事にしていることでしょう。プレイヤーとしては、自他ともに認める一流なのかもしれません。しかし、マーケット拡大時代は、馬力さえあれば誰でも一流になれました。動けば動くほどモノもサービスもよく売れました。
こうした成功体験を重ねてきた管理職は、現代の部下に歯がゆさを感じるケースが多いのでしょう。それが部下育成のネックになっている場合が多いのです。
上司が自信を持って自らの経験を話すことすべてが育成の害になるというわけではありません。部下が自分自身で考えるべきところ、自分で考えることによって育っていく場面なのに、その貴重な機会を上司が奪ってしまうことが大きなマイナスになるのです。こうしたマイナスにしかならない指導の仕方をすると、部下は間違いなく「受け身人材」になってしまいます。
ポテンシャルの高い部下は細かすぎる指示や長々とした説明を嫌います。素直に受け入れません。内心、「ずいぶん私の能力を低く見ているんだな」「馬鹿にされているのかな」「もういいよ。早く着手したいのだから……」といった思いが募ってしまうことでしょう。
中小企業の社長さんや管理職の方々に時々、「今の若い奴は自分で考えようとしない」とグチを言われることがあるのですが、自社の職場をよく見ていれば、こういうことが普通に行われているに違いないのです。
直属上司は良かれと思って細かい指示をしているのでしょうが、優秀な部下になればなるほどやる気を失います。そして、こう考えます。
「この会社に長くいてもいいことはないかも……。給料は上がらないし、会社としての将来性もない感じ。早いところ辞めてほかの会社に行こうかな」
実際にこう考えて転職する若手社員は多いのです。ポテンシャルが高ければ高いほどそう考えます。
では、部下が自ら考える伝え方・説明の仕方とはどういうものなのでしょうか。たとえば、部下が「ここは、どのようにやればいいのでしょうか」と質問してきたとしましょう。皆さんはどのように答えているのでしょうか?
私の結論は簡単です。最も効果的な対応は、答えを言わないことです。
プレイヤーとしての自信を持ち続けている上司や、輝かしい功績を残している上司は「喜んで答えを言う」という反対の対応をしています。
賢明な上司は、答えを示したいところをグッと抑えて「もう少し自分で考えてごらん。君ならできるよ」と、答えを言わない励ましで背中を押してあげるのです。
もちろん、何も言わずただ「君ならできる」と励ますだけでは、当然のこと部下は育たないでしょう。
ここが大事なところです。答えを言わない代わりに、自分で考えるための具体的なヒントを示してあげるのです。もちろん、「ヒントはこうだ」などという直球で示すような話し方はしません。
部下に関連質問をして考えさせ、気づかせるという方法が最も有効です。たとえば、こんな会話の仕方です。
上司「そう、うまく進まなかったのか……。見ているかぎりは上手くいっているように思えたけど。どこで躓いたのかなあ? A社の担当者は、具体的にどういう言い方をしているの?」
部下「担当者は好意的に対応してくれていると思います。なのに、なんだか急に対応が変わったのです」
上司「ほう。何か思い当たることはないの?」
部下「ありません」
上司「たとえば、他社の商品について何か言ってなかった?」
部下「あっ、そういえば……」
と、こんなふうに部下に質問することによって事実関係を確認し、部下が把握している事実関係に基づく質問を続けます。質問することによって部下の頭の中を躓いた経緯と解決法に集中させるのです。
この場面は答えを探すというよりも、直面した問題に集中して考えさせることが目的です。たとえ答えがはっきりわかっていたとしても部下には言いません。ここでは、答えを言わないことが最も効果的な指導なのです。
ただし、部下が上司に質問してきたことにはていねいに答えてあげます。質問が出るというのは、自分で一所懸命に考え始めた証左だからです。その質問に答えてあげるのは、部下の頭の中を活発に働かせる潤滑油になります。
そして、部下が自ら解決すべき方向性に気づいたら、しっかり褒めてあげます。そして、行動に移させる。この流れが自律人財を育てる基本です。
部下が自分で考えた正しい方向性に沿った行動に着手してからは、絶対的に大事なことがあります。
私たちG.S.ブレインズグループが最も大事にしている「振返り」というプロセスです。チームを強くする「PDCA」のサイクルに置き換えれば「C」(チェック)の部分です(「PDCA」については、のちに詳しく解説します)。
「振返り」は部下自身で行うべきことですが、対面でもリモートでも、上司のチェックは欠かせません。
最後に整理しましょう。
本人が自分で考えるようになる伝え方として、次の3項を頭に入れて下さい。
〈管理者として貫くべき基本スタンス〉
・答えを言わない
・徹底的に考えさせる(質問で気付かせる)
・徹底的に「振返り」をする、させる
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