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2025.04.10

減価償却資産の取得の単位

減価償却資産の取得の単位
社内の備品や設備を購入する際、「一式」の記載に迷った経験はありませんか?
例えば、会議室用の机や椅子などをまとめて購入した場合、それぞれ個別に減価償却資産として扱うのか、一括で処理できるのか判断に悩むことがあります。実際のところ、取得価額が10万円未満であれば損金算入が可能なケースもありますが、問題はその「1単位」をどう捉えるかという点にあります。

見積書の記載に頼るのではなく、資産の使用形態や機能性などを踏まえて判断する必要があります。また、税務調査で実物確認が入ることもあるため、こうした基準に沿った明確な整理が求められます。
実務で迷いやすいこのテーマについて、注意すべきポイントを押さえておきましょう。

はじめに

先日、お客様から次のような質問がありました。内容は「会議室用に机、椅子などを大量に購入したが、見積書や請求書に会議室用机、椅子一式と書かれていて、これらを一式として減価償却資産として扱うべきなのか、それぞれ一基、一台の取得価額で判断すべきなのか判断が付かない。」というものでした。

法令

法人税法では第2条第22項と第23項において固定資産(土地、減価償却資産、電話加入権、その他政令で定めるもの)と減価償却資産(建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で償却をすべきものとして政令で定めるもの)が定義されていますが、特に金額基準のようなものは登場しません。

金額が出てくるのは法人税法施行令第133条第1項であり「減価償却資産で、十万円未満であるもの(貸付け(主要な事業として行われるものを除く。)の用に供したものを除く。)又は、使用可能期間が一年未満であるものを有する場合において、当該資産の当該取得価額に相当する金額につき損金経理をしたときは、その損金経理をした金額は、所得の金額の計算上、損金の額に算入する。」としています。

要約すると、減価償却資産を取得し、その取得価額が10万円未満である場合、又はその資産の使用可能期間が1年未満である場合に取得価額に相当する金額を損金経理したときは、その事業年度の損金に算入することができると規定されているわけです。

資産の取得単位

ここで、取得価額が10万円未満であるか判断するためには、その資産の1単位の取得がどの範囲なのかという問題が残ります。

国税庁のタックスアンサー№5403では「例えば、応接セットの場合は、通常、テーブルと椅子が1組で取引されるものですから、1組で10万円未満になるかどうかを判定します。

また、カーテンの場合は、1枚で機能するものではなく、一つの部屋で数枚が組み合わされて機能するものですから、部屋ごとにその合計額が10万円未満になるかどうかを判定します。」と回答しています。

よって「通常1単位として取引されるその単位」を1単位とする考え方が必要となってきます。

また、次のような観点からも検討が必要と考えられます。

その資産が、他の資産と組み合わせする必要がなく単独で機能するものであるか

②本来は一つ一つとして使うのではなく、1組又は1揃いとして使うために作られていないか

デザインや機能等に関連性はないか。デザインや素材、機能等に共通性、関連性があり、一つを切り離したときにその資産の機能が著しく損なわれないか。

これらを考える上で、次のような判例があります。

最高裁判所平成18年(行ヒ)第284号・NTTドコモ北陸事件)では、「エントランス回線※は、1回線で、基地局とPHS接続装置との間の相互接続を行うという機能を発揮することができるものであるから、その取得価額は、エントランス回線1回線の単価である7万2,800円であると認めるのが相当」とされ「課税庁が主張する取得価額を判断する単位は、集合体としての資産とみるべきである」という考え方は採用されないとした事例です。

※エントランス回線:エントランス回線とは、移動通信網における基地局と交換局を結ぶ回線のことをいいます。

例外

1単位の取得価額が10万円未満であっても、その資産を貸付けの用に供する場合には、注意が必要です。

少額資産(取得価額が10万円未満の資産)を取得し、これをリースやレンタル物品として賃貸する節税策(通称、ドローン節税とか足場節税などといいます。)が横行したことから、令和4年度税制改正でその節税策を防止しています。

その内容は、利益を圧縮したい事業年度に、大量のドローン(1機10万円未満)を購入(令和4年度税制改正以前は損金となる。)し、ドローン操縦資格を取得するためのスクール等に貸し出すことで、ドローンの取得金額は経費として損金に全額が計上され、貸出料収入は期間対応で収益計上される結果、損金の額が収益を上回ることから赤字が創出できるスキームになります。物はドローンだけでなく、10万円未満であればよく、貸出先さえ確保できれば、このようなスキームが可能であったため、足場を使った手法も一時期、流行しました。

令和4年4月1日以降は10万円未満の取得価額の減価償却資産を取得し、貸付けを行った場合には、その取得金額に相当する金額を一時の損金に算入することができず、減価償却を行って償却限度額相当額を経費に計上できることになっています(リース会社のように、節税目的ではなく本来の事業としてリース業等を行っている事業者が取得した資産を貸付けた場合などは、「主要な事業として行われる貸付け」に該当するとして、この改正の適用対象外となっています。)。よって、意図的な赤字の創出はできないことに改正されています。

まとめ

取得資産の1単位の範囲をどこまでとするのかという問題は、見積書や請求書に記載されている「一式」といった表示に惑わされず、実物を確認して1単位の範囲を判断することをお勧めします。税務調査の場面でも、調査官は疑問を持った資産については書類上だけではなく、実物を確認して、その資産の状態を把握する手法を採っていますので、これは参考にするべきであると思います。

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G.S.ブレインズ税理士法人 顧問

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