-多田社長をはじめ、長年勤められている社員も何名かいらっしゃるのでしょうか。
私と同期入社の同い年の社員が何人かいますし、私より先輩の社員や退職後にパートとして残ってくださっている方もいます。長い歴史の中で年齢を重ねるにつれ、求められる役割も変化していきます。そうした変化に柔軟に順応できた人たちが今も残っていると思います。立場に固執して変化に対応できないままでいたら、長く働き続けることは難しかったはずです。
会社が厳しい時や過去の経緯をよく知るベテラン社員の方々が現場におられるのは、経営する上でも非常に心強い存在ですし、苦しい時期を一緒に経験し乗り越えてきた仲間がいることは本当に心強いと感じています。
-現在は、若い方でも店長として活躍されているでしょうか。
そうですね、店長は30代や40代の年齢層です。
一般的な企業であれば、明確な仕事があって「自分にやらせてほしい」と手を挙げ、任されるケースが多いかと思いますが、弊社の場合は、店舗規模や業種や業態が異なっているので、例えば居酒屋なら、新潟駅前の店舗は240坪ありますし、逆に新潟駅の駅ビルの店舗は28坪とだいぶ規模が違います。それでも、どちらも同じ「店長」です。
そうした中で、店長としての基準は「人・物・金」になります。まずは「人(一緒に働く仲間)」をきちんと理解できること、そして「物」を適切に管理できること、最後は「お金」の管理ができることです。
また、社是として「素直」「感謝」「詫び」「本気」という言葉があり、経営理念には創業当時からの「心と願い」というのが常に入っています。毎回の会議でも理念を全員で読んでいます。理念は基本的に「人」の部分が全てです。「お客様をどういう気持ちでお迎えするのか」、「一緒に働く人たちにどう向き合うのか」、「そして会社に対してどう取り組んでいくのか」。それらについて「こうしなさい」と具体的に書いてあるわけではありません。「自分たち一人ひとりがその部分を考えて行動してみよう」、というスタイルです。自分で考えさせるスタンスですので、答えが何年経っても出ないこともあります。答えは自分たちの中で作り出していくべきだというのが私の考えです。
-社是の4つの言葉をキーワードとして、社員の皆さんが仕事の中で軸を外さないよう、自分で考えながら仕事に向き合うということでしょうか。
そうです。一人の人間として認めてもらうことも大切ですが、まずは「自分自身がどうあるべきか?」という部分が重要になります。「素直」「感謝」「詫び」「本気」という姿勢ができれば、基本的にはどんな場所でもやっていけますし、真摯に仕事と向き合っていけると考えています。
こうした考え方を現場で周囲にしっかりと伝えられる人が店長になってくれれば、会社にとっても一番望ましいのではないかと思っています。
私はここが大事じゃないかなと思うのですが、一番は「自分がどう向き合うか?、どうしていくのか?、どうあるべきか?」ということだと思うのです。それが「素直」「感謝」「詫び」「本気」ではないかと思っています。
ここに書かれている「心と願い」という文章について、創業者が書かれた長文のものがあります。私は創業者:小船井さんと一緒に仕事をした経験がありますが、やはり創業者は別格です。お客様に向き合う姿勢も、従業員に向き合う姿勢もまったく違いますので、やっぱり創業者と同じようにはなれないですが、次の世代に伝えていける人間にはなろうと思っています。
創業者は、根本的に普通の人とは違うものを持っていないと、会社を立ち上げるなんてできないのだろうなと思います。ハンドブックにも書いてありますが、最初は小千谷という小さな田舎の街で、小さな履物屋さんから始め、なかなか上手くいかず、試行錯誤しながら長岡に出てきて、色々と相談されたそうです。金融機関からお金を借りるにも人の保証が必要だということで、保証人になってくれる人を探して、その時になってもらったのが酒屋さんでした。そこでお世話になりながら、一人でも多くのお客様に来てもらうために自ら行動を起こしていくわけです。今みたいにSNSも携帯もない時代ですから、宣伝カーに乗ったりチラシを撒いたりしながら、一つずつ形にしていかれました。そうした努力というのは、実際にゼロからやった人でなければまず無理だと思います。
一方で、会社を守る側の私としては、創業者の想いを引き継いでしっかりと伝えていくこと。今の時代に合わせて、どうしていくべきか?どう行動を作っていくか?を模索していくべきなのではないかと考えています。
-理念や社是は、社員採用で基準にされているのでしょうか。
面接で一番大切にしているのは「人が好きかどうか」ですね。飲食業ですから、働く仲間も人ですし、来られるお客様も人です。「人」というキーワードに対して偏見を持たず、人と接するのが好きだったり、人に喜んでもらいたいという気持ちを持っていたりする人が、やはり伸びていくのではないかと感じています。
今の時代は労働時間が決められて、働く人の権利を大切にすることはとても重要だと思いますし、それに合わせた環境を整えるのが会社の役割だと思っています。ただ、仕事を代わってもらう時に「ただ権利を主張して終わり」とするのではなく、「後はよろしくお願いします」と、周りに引き継ぐ姿勢や引き継ぐ相手の気持ちなど、人としてどうあるべきかという部分が大切だと思います。代わりにシフトに入って働いてくれる仲間がいるからこそ自分も休めるわけで、「お互いが感謝の気持ちを持って向き合うことができるか?」を重視し、これまで山崎会長も理念を一緒に作ってこられましたので、この想いを軸にした経営を承継しています。